夢子のホテル大好きシリーズ

鎌倉プリンスホテルとその界隈 

サイコーの場所にホテルが 

ロケーションは重要だ。何につけ。増してやホテルを建てようなんてことになったら、最重要

という程の課題となる。その点で、このホテルは最高の立地を手にした。相模湾を一望に出来る

鎌倉・七里ガ浜の小高い丘の上。朝比奈インターチェンジで横浜横須賀道路を降り、鎌倉霊園の

前を通過して、鶴丘八幡宮。鎌倉駅の脇を通って暫く行くと、突然目の前に大海原が広がる。2

月の末とはいえ、もう初春の光が凪いだ海にキラキラと反射して全身に眩しい。稲村ヶ崎。若い

人なら「稲村ジェーン」を連想するのだろうが、私は何故か古い歌「♪七里ヶ浜の磯づたい 稲

村ヶ崎名勝の 剣投ぜし古戦場」を口ずさむ。はて、何という曲だったか。この曲の歌詞とは

反対に、次が七里ヶ浜だ。江ノ電の踏み切りを渡って、あの有名な坂を登り始めると、右側に鎌

倉プリンスホテルのバンケットホール「七里ヶ浜」、更に登っていくとやはり右手にホテルの本

館がある。正面玄関の前に広い駐車場とゴルフ練習場が併設されている。ホテルから改めて海を

眺める。右手には江ノ島。もっと右には、やや、富士山まで見えて。何という眺望だろう。まさ

に最高の立地である。

不思議なホテルの構造

本館は外から見たら2階建て。しかし、館内にあるエレベーターは4階構造になっている。何

故だろう。本館からバンケートホールに行くエレベーターはなお更不思議だ。最初横に水平に動

いていたが、途中から斜め下に降りて行く。その間1分30秒。エレベーターの中には「安全の

ためバーにつかまってください」という注意書きさえある。何だか地下深いところに宝石の原石

を掘りに行くようで、わくわくする。斜行エレベーターなんて、ほんとに面白いことを考えたね。

それは良いとして、何故2階建てが4階建てか。1階の筈のロビー階のフロアーは3階、私が泊

まった部屋は225号の筈が425号室、フランスレストランの「ル・トリアノン」は地下の筈

が2階なのである。う〜む。滞在中ずっと考えていた。帰りにタクシーを待つ間、ホテルのパン

フレットの写真を見て、氷解。つまり本館の3・4階とバンケートホールの間に別棟の1・2階

があるのだが、正面からは見えないということだった。そんな気はしたんだけどね。1・2階に

各20室、3・4階に各30室の計100室のこじんまりしたホテルである。レストランは「ル・

トリアノン」の他にゴルフ練習場の2階に和食の「ななかまど」、ロビー脇にラウンジ「あじさ

い」がある。鎌倉プリンスホテルといえば、中年の男性は決まって「あぁ失楽園」と言う。日経

新聞に渡辺淳一さんの「失楽園」が連載されていた頃は、株価の話より久木と凛子がどこに泊ま

って何をした、なんて話が昼休みの話題になっていたっけ。その2人がある金曜日の夜から鎌

倉プリンスホテルに滞在し、土曜日のディナーを「ル・トリアノン」で取る。近くの海で採れ

た鮑を、シェフに任せて軽く蒸したものとバターでいためたのと両方食べる場面が出てくる。そ

の会話にヒントを得て、このホテルはしっかり「失楽園 夕映えディナー」として名物にしてし

まっている。どんなメニューかといえば、鮑3種の味わいキャビア添え、とこぶしのコンソメ

スープ、和牛フィレ肉の網焼きトリィフの香り、腰越潮騒サラダ、七里ヶ浜のリゾット、アイス

クリームのグラタン鮑見立て、コーヒーと小菓子ってものなのですって。1万2千円也。食べで

もいないのに、延々とメニューを書くって空しいですね。そんなことで、ここ鎌倉プリンスホテ

ルは、若いカップルだけでなく、危険な恋に憧れる奥様方にも殿方にも大人気のホテルなのであ

る。 

全室オーシャン・ビュー

 私の部屋は425号室。ロビーは宿泊棟の一番左側の別棟にあるので、1番遠い430号室の

人は大変だ。ちょっと手前の425号だって大変だ。ひたすら歩く。ぺたぺたぺた、のっしのっ

しのっし。講座を受けていただけで運動不足だったから、感謝すべきかな。部屋のタイプはツイ

AB、ダブル、スィートABがあるらしいよ。私の部屋はダブルだった。キングサイズベ

ッドで、私のサイズでもキチキチに寝れば4人は眠れたと思う。3人なら楽ちん。変なことを想

像してはいけません。あくまでもベッドの大きさのことを言っています。ただ、部屋の広さがそ

れ程大きくは無いので、据え付けのデスクの前に誰かが座ると後を歩くのは無理。ベッドの硬さ

はかなりの硬めで気に入った。今回は講座を主催する任意団体が60名分をまとめて予約したの

だが、例によってそば殻枕と毛布2枚の個別オーダーをホテルに直接電話でしたところ、未だ部

屋割りを団体から貰っていない段階だったものの、希望は完全に叶えられていた。よし! ただ

このホテルのそば殻枕は枕一杯にそば殻が満ちていて、高過ぎてしまうのが難であったが。入り

口と寝室の間に仕切りの戸がある。軽井沢プリンスホテルにも仕切りの戸があったが、個室感覚

が増して良い配慮だと思う。バスルームは、まぁ標準か。アメニティグッズは、シャンプー、リ

ンス、歯ブラシ、シャワーキャップ、くし、レーザー、石鹸でデザインなどには手間を金もかけ

ないという主義が見える。ドライヤーは据え付けだが、客室係りに頼めば、普通のドライヤーを

持って来ると書かれていた。ヘルスメーターやバスローブは無い。トイレもシャワートイレで

は無い。バスタブは大きからず小さからずで色はピンク。金庫がついているのは、夏場に部屋を

留守にしがちな客には便利だろう。もちろんプリンスホテルだから冷蔵庫は空っぽで、ロビー階

の売店で飲み物を買って入れるのは他のプリンスと同じ。ポットはあるが、お湯は沸いていない

し水も入っていない。無料のお茶と300円のコーヒーがあった。クローゼットの引き出しがわ

りと多いので、3泊〜4泊しても荷物の収納も可能か。ま、細かいことはそれ位にして、窓から

の眺めを見よう。海や江ノ島の眺めは同じだが、県立七里ヶ浜高校の校舎と校庭が見える。もう

生徒は下校したらしく静まりかえっている。そしてホテルの庭にあるプールも見える。25m×

4コースだから大きいプールではないが、海を目前にした広い庭の真ん中に青いプールという配

置が視覚的に印象的だ。

夕刻客室の窓から見たプールと江ノ島

鎌倉プリンスホテル界隈

 今までも何度か鎌倉には来たことがある。しかし、初詣でであったり、夜のドライブで立ち寄

ったりという中途半端な目的で、この魅力に満ちた街を満喫したことがない。食いしん坊の立場

からも行ってみたい店はとても多い。今回も1泊の合宿講座に参加するために来たので、小トリ

ップを楽しめる程余裕はない。ないが、そこを何とか工夫する。まず早めに鎌倉に着いて、早め

の昼食を取る。鶴岡八幡宮の前にある「一茶庵」でそばを食べる。「一茶庵」系のそば屋は、変

わりそばが得意。季節ごとに柚子や芥子などをそば粉に入れてそばを打つ。ということで三色そ

ば(1350円)。きっと足りないとフンで鴨南蛮(1800円)も頼む。三色そばは、せいろ

と茶そばに芥子入りそばだった。まぁ美味しいのだが、敢えて言えば何だか物足りない。仕事が

丁寧でない感じがする。続いて鴨南蛮。これはうどんを頼んだ。平打ちうどん好きの私を喜ばせ

たが、これも頼りない感じなのだ。それに南蛮なのだから、長ネギはこんがり焼いて使って欲し

い。ま、こんなに細かいこと考えなければ「あぁ〜うまかった」という人が多いと思いますけど

ね。

 

 夜は結構なコースディナーだったのだが「ついで鎌倉探訪」の工夫の一環でパスして、ホテル

の近くの「さらい」に行く。この近くに会社の後輩が一戸建てを買って移り住んでいるのだ。彼

女が指定してくれた店だから間違いないだろう。待ち合わせは午後8時。正面玄関から真っ暗な

外に歩き出すと、冷たく強い風が容赦なく吹きつける。ホテルの敷地を出て坂を登り出すと更に

風は強まり、コートを着ていない身にはツライ。風が逆巻いているような気がする。ホテルで念

のため「さらい」の場所をフロントに尋ねると、「待ってました」と言わんばかりに素早くホテ

ル近辺の地図を出してくれ、縦板に水のように陽気に教えてくれた。ホテルで夕食を取らない客

なのに愛想が良いなぁと感心するほどだった。もっとも私は権利をパスしているだけだから食事

代の支払いはしているんだけどね。「玄関の前にあるあの緑の植物が地図のここでございます。

ゴルフ場の横を通って、敷地を出たら右に曲がってください。上の方をご覧になると、ほら、こ

の有名な「珊瑚礁」の店の前のタイマツが赤々と燃えているのがわかると思いますよ。ずっと先

に行かれるとプロムナードがありまして右手に「さらい」はございます。はい。行ってらっしゃ

いまし」。親切なホテルマンなのだった。

 そのタイマツが見えない。右側はホテルのゴルフ練習場。左手は高級そうな住宅街。ひとっこ

ひとり歩いていない。寒い。暗い。そこへ「七里ヶ浜循環」のバスが後から走って来て、私を追

い越して去って行った。時間にすればほんの数分だったのだが、とても心細い道のりだった。タ

イマツは見える筈がなかったのだ。今日は月曜日で「珊瑚礁」は定休日なんだって。後輩と途中

で会った時は、心底ほっとした。そして暖かい「さらい」に入り、その家庭的な雰囲気が大いに

気に入って機嫌良く食べ飲んだのだった。鰯や鯵、穴子などの地魚を使った料理がメニューにた

くさんあって、選ぶのに困る程。みんな新鮮でうまかった。店名と同じ「さらい」という酒も呑

み易い。そしてこの店は実にお安いのだ。

すっかり良い気持ちになったついでに、車で送ってあげましょうと後から店に来てくれた後輩

のご主人のベンツでブイッと海岸をひと走り、稲村ヶ崎のこれまた雰囲気のあるバー「ジャーク」

に行った。以前は違う店名だったらしいのだが、経営者が代わって「ジャーク」になったのだと

か。夕方5時から朝の5時まで営業している由。という訳で、探訪の工夫をした結果、鎌倉チッ

クな夜を過ごせたのであった。

   

ホテルでの食事は海を見て

早く目が覚める。講座を受けに来たのだから旅ではないのだが、自宅から離れると非日常が起

床時間にも現われて、俄然早起き人間になる。早速カーテンを開けると未だ海はうす暗い。しか

し、夜明け直前の気配がし、やがて朝日が左手から徐々に射して来る。今日初めての新鮮な光が

県立七里ヶ浜高校の上に続く丘の上の住宅街を、海を、江ノ島を照らし始めた。そして富士山が

見える。夕方もいいけど朝もいいねぇ。さぁ、朝食、朝食。

この頃はホテルの構造の秘密をしっかりとは分かっていなかったのだが、2階の「ル・トリア

ノン」に行く。本館の客室より海がもっと近く見える。すっかり明るくなって眩しい景色。料理

はブッフェスタイルで、ここも料理の数が多い。いつものように和食中心の料理を盛り付けて、

キラキラ光る海を見ながら美味しく頂きました。午前9時から講座が始まって、昼食はバンケッ

トホール「七里ヶ浜」の6つある宴会場の1つで。ここも午後の明るい海を眺めながらお弁当を

美味しく頂きました。

 

朝のヴュッフェ        お昼のお弁当

海の手前に江ノ電と国道134号線が走っているが、上空にそれはたくさんのトンビが飛び電

線にとまっている。ゆうべ後輩から聞いたところ、「キングバーガー」が出来てから、とんびが

たくさん集まるようになったのだとか。店のテーブルに座っていれば、例え外であっても大丈夫

だが、堤防に座ってパクつこうとすると、とんびにパクつかれてしまうそうだ。帰りに片瀬江ノ

島まで乗ったタクシーの女性運転手さんのご友人は、ハンバーガーを奪われただけでなく、軽く

だが頬をエグラれてしまったそうな。とんびといえば、その昔三橋美智也の「♪とんびがくるり

と輪を描いた ほ〜いのほい」という唄が浮かんで来るが、七里ヶ浜のとんびは、海を見ながら

ハンバーガーの食事をすることにこだわっているようだ。とんび君、いい加減にしないとゾンビ

のように嫌われちゃうぜ。

 

とんび君      江ノ島の境川     片瀬江ノ島駅               

 

                                                    おしまい

 

鎌倉プリンスホテル:

248-0025 神奈川県鎌倉市七里ヶ浜東1-2-28 0467-32-1111

泊まった日/2001年2月

 

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