夢子のホテル大好きシリーズ   

かんぽの郷宇佐 

公共の宿はウン十年ぶり

宇佐、中津、安心院(あじむ)あたりで宿泊しようとホテル、旅館を探した。日本

ホテル協会会員ホテルは無いしなぁ。大分市、別府市まで行けばいろんなタイプの宿

泊施設がワンサとあるのだが。九州や大分のガイドブックに「かのぽの郷宇佐」が紹

介されていた。翌日は別府でゴージャスコースだからエコノミーコースにしようか。

公共の宿といえば、20歳の頃九州一周貧乏旅行をした時、仲間のご両親が鹿児島・

桜島の国民宿舎を予約してくれていて、久々に清潔な宿に泊まって感動した思い出が

ある。その時だけだ、公共の宿を利用したのは。何だか半年とか3ヶ月前とか、とて

も早くから予約しないと取れないというイメージがあったし、「かんぽの宿」というく

らいだから、簡易保険に加入していないと泊まれないのではないか、とちょっと心配。

3週間前だったが、平日宿泊で1人ということもあって、すんなりと予約は取れた。

しかし、簡易保険非加入だというと料金に1500円上乗せされたけれど。面白いと

思ったのは、予約して暫くすると「かのぽの郷宇佐」から封書が届いた。中には、本

当に予約通りに泊まるのかという確認と、泊まるなら何を食べるのかという確認、そ

していわゆる宿帳を予め記入して持って来いと用紙まで入っていた。確実で厳格、親

切でもあり、お役所くさくもあって。テヘヘヘ、かんぽの宿ってどんなとこだろう?

宇佐大社から程近くに宇佐風土記の丘があり茜射す風土記の丘からぶらぶら歩くと

「かのぽの郷宇佐」があった。広い敷地に体育館や流水プールなどのスポーツ施設を

たくさん併設し、「宇佐簡易保険総合レクセンター」というらしい。入り口に「開業5

周年記念プラン」の旗が強風にはためいている。5年前に出来たのね。入り口の反対

側には、宇佐出身の稀代の名横綱「双葉山」の銅像が立っている。はら、69連勝し

た人よ。随分昔の人だと思っていたが、明治45年生まれというから、私の父より5

歳も若い。昔の住所表示でいう宇佐郡天津村布津で生まれ、後に「35代横綱双葉山

定次」となった彼は、69連勝を成し遂げ、昭和14年1月、安芸の海に敗れて連勝

はストップした。年寄り「時津風」となって理事長としても活躍。そして昭和43年

56歳でその生涯を閉じた。相撲好きの一家で、4、5歳の頃から肝心な時に聞こえ

なくなる大きな鉱石ラジオに耳をつけて相撲中継を聞き、中学2年の時から国技館

(その当時は日大講堂でやっていたんだったかしら)の枡席で観戦した。大鵬が前頭

だった頃のこともよく覚えている。仕切りを繰り返す内に、透き通った真っ白い上半

身が上気してぽっとピンクに染まった。その頃、双葉山は時津風理事長だったんだな

ぁ、と懐かしく思い出す。

かんぽの郷宇佐   名横綱「双葉山」

 405号室はシングル。狭い。しかし、ビジネスホテルのそれと違って、心配りが

あって暖かい。冷蔵庫の上のポットにはお湯が沸いていたし、夜には氷入り水のポッ

トを各部屋に配っている。良いサービスね。鏡の前には小さいながら野の花が活けて

あった。部屋はもちろん、館内いたるところにアンケート用紙が置いてあり、向上す

る心が伝わってくる。手提げになっているお風呂のセットをぶら下げて、1階奥の大

風呂に向かう。風呂のみの利用客も多いらしく、風呂場の前にはチケットを受け取る

お爺さんが座っていた。軽く会釈しながら「お疲れ様です」って。いや、こっちは遊

んでいるんであってですね、そちらこそ・・・なんて言いそうになる。この宇佐温泉

は、ナトリウム・マグネシウム炭酸水素塩泉なのだそうで、中に入ると幾つものお風

呂があって嬉しい。入り口右手にはサウナと水風呂、泡末湯、寝湯、打たせ湯、座り

風呂、大浴場などがあり、それぞれ試して楽しむ。打たせ湯も意外と肩凝りに効果が

ありそうで、何度も上から落ちるお湯を肩に当てているうちに気持ちが良くなって、

今晩のマッサージは要らないと思う。後刻知ったのだが、ここではマッサージサービ

スは無いようだったから、ちょうど良かった。最後に露天風呂へ。この日は風が強く、

重いガラスドアを開けると、むちゃ寒い風がぴゅうと吹き込む。露天は入りたし風は

冷たしで、逡巡するが風呂の魅力が勝つ。寒くてぶるるる、風呂に入って暖かくてぷ

っわ〜。温泉の表面から盛んにもうもうと上がる湯気が強風に遭遇してたちまち吹き

流されてゆく。1人で大きな露天風呂を占拠している私も、首から下はぽっかぽかだ

が、その上の顔は風に冷たい。まさに頭寒足熱。気持ちがいい。かんぽの湯でポカン

としてしまう。

                     

 風呂を出て部屋に向かう途中で土産物売り場に立ち寄る。ウマイモノだらけの大分

だから、目移りして困る。まずはだんご汁だな。だんご汁は我が家の定番のメニュー

でもあるから当然仕入れる。生タイプは初めて見た。だんご汁を作る味噌も買う。姫

島のわかめもうまいという。酒呑みに欠かせない「うこん」が千円と安い。じゃ2本。

大分といえばどんこの干し椎茸。椎茸の佃煮もいいね。青海苔もあったぞ。「いさご」

という落花生のお菓子もうまそう。売店のお姉さんに「私は食品を見ると買うのをヤ

メラレナイ病気なので、冷静に見て買い過ぎだと思ったら止めてください」とお願い

していた。そこで声が掛かる。「買い過ぎです!」。「じゃ、あと3つだけ」とお願い

して、まとめて宅配便で送って貰うことに。海産物は明日か明後日買おうっと。重量

を測って貰うと、5キロを少しオーバー。料金がドンと上がる。じゃ、どれかを箱か

ら出そうとする私に、お姉さん「大丈夫です!運送会社には私が何とかしますから」

とキッパリと言うのだった。大分の女性は、実にしっかり者なのである。

     

落花生のいさごせんべい なばなばは椎茸の佃煮

午後6時から30分単位で夕食の時間を選ぶことが出来る。私は7時半に予約して

1階のレストラン「御許おもと」に行くと、既に他の客は引き上げて誰もいない。席

に案内されて「これじゃあ、急いで食事しないと申し訳ないわね」と係りの女性に言

うと「そんなことはお気になさらずに、ゆっくり召し上がってください」という。そう

だな、今日は5周年記念の「ときめき21プラン」1万1800円(但し私は非加入

者だから1500円高いけど)コースを選んだので、何だか料理の数がとても多いら

しいし。因みに料金の内訳は、シングルルームチャージ5千円、夕食5千円、朝食

900円に入湯税、消費税のようだった。さて、食事が始まる。生ビールの中を頼ん

だら、ビアホールのジョッキがド〜ンと出て来てびっくり。それから出て来た料理を

ずらっと書く。食前酒のライム酒、蟹味噌豆腐とぎんあん、ふり柚の小鉢、前菜とし

て干し柿チーズ巻、押し寿司、ふぐの一夜干し、ホタテ柚庵焼、牡蠣黄身焼、チシャ

トウ味噌漬け、お造りの車海老、鮃、赤貝、鮪とあしらい一式、焼ズワイ蟹、雲子揚

げ出し、ズワイ蟹の鍋、豊後牛のステーキ、あん肝、海老入りの土瓶蒸し、蟹釜飯、

漬物三点盛り、デザートのメロン。あぁ。これが次から次とうやうやしく運ばれてく

るのである。でも、どうして宇佐でズワイ蟹なのだろう。焼ズワイ蟹を運んで来た若

いお兄さんに聞いてみた。

「これはどこのズワイ?」

「どこって、水揚げされたとこって意味っすか?」

「それ以外の場所って何かあったっけ?」夢子の皮肉もあまり通じていない。

「調理場で聞いてきます」

ややあって、「今聞いてきたんですが、北の方らしいって」

「はぁ、北の方・・・・・」。

インド洋でズワイは捕れんだろうが。

それに比べて、ステーキを持ってきたお嬢さんに

「これはどこのお肉?」と聞くと、

すかさず「はい、地元の豊後牛でございます」とスラスラと答えたのだった。繰り返

すが、大分の女性は、実にしっかり者なのである。結構なご馳走コースではあったが、

量が多すぎてねぇ。量をもっと少なくして味に注力した方がいいのではないか。白子

好きなので鱈の白子である「雲子の揚げ出し」と漬物の大根は気に入った。中ジョッ

キの後は、純米吟醸の「わかぼたん」と「双葉山」の冷酒を飲む。

豊後牛のステーキ  雲子揚げ出し         自家製の漬物

 翌日早朝から目が覚めて、6時から入ることが出来る温泉に入ろうか迷ったが今日

の行動計画を考えてやめた。荷作りしていると、窓の外が明るくなり始め、日の出の

光が眩しい。ゆうべあれだけご馳走を食べたのに、もう空腹でレストランに向かう。

ヴュッフェ形式だが、料理の数が多くて嬉しい朝食。ワシワシと椎名誠風に平らげる。

チェックアウトすると酒代2100円入れ1万5580円だった。コストパーフォー

マンスや良し。ここは、スポーツ施設が整備されていて、大きな流水プールやウォー

タースライダー、25m×8コースのプール(以上は夏場だけ)、テニスコート、ゲー

トボールコート、ファミリーゴルフ、グランドゴルフ、体育館など運動を楽しみなが

ら宿泊することが出来る。私も最近は独学で背泳ぎなんかするしね。ふふふ。部屋の

案内にこの宿発でここに到着する条件の六郷満山の各寺を廻る小型タクシーのプラン

なども紹介されていてた。「かんぽの郷宇佐」は、国東半島めぐりには打ってつけの宿

かもしれない。

初めて泊まったかんぽの宿だが、ロビーには他のかんぽの宿のパンフレットが置い

てあり、各地に実にたくさんの宿があることがわかった。簡易保険加入者は3ヶ月前

から郵便局にある専用ハガキで申し込みが出来て、非加入者は1ヶ月前に直接申し込

む訳ね。ふんふん。旅好きの私、かんぽの宿もこれから大いに利用しようかな。もっと

も、1人モンじゃあ簡易保険に加入することは無いだろうけどね。

豊の冬 ( ひと ) 懐かしくだんご汁

 

                              おしまい

 

データ/かんぽの郷(さと)宇佐  〒879-0452 大分県宇佐市大字川部1571-1

    電話097-837-2288  ファックス097-837-0102

    日豊本線「柳ヶ浦」駅からタクシー7分(5.3キロ) 

        「宇佐」駅からタクシー10分(6.5キロ)

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