夢子のホテル大好きシリーズ

リーガロイヤルホテル早稲田

近所にホテルが出現

同僚や後輩の早稲田OBは、大隈会館で挙式・披露宴をやる人が多い。何度かそうした披露宴

に招かれて大隈会館を訪れたが、ある時こんな話を聞いた。老朽化した会館を建て替えることに

なったので、この会館での披露宴は今日が最後だと。当時は頼まれれば主賓をやっていたから(今

は一番サービスして乾杯の音頭)、そのことを織り込んだスピーチをした記憶がある。「由緒ある

当会館での最後のご結婚披露宴にお招きを賜わり、かつお話しをさせて頂く栄に浴し・・・光栄

に存じ・・・当会館をマナコに焼き付けて、後世まで・・・」だったかどうかはあやふやだが、

そんなことを話した。

6歳上の兄は早稲田出身である。早稲田大学のキャンパスに初めて来たのは中学2年の時。そ

の兄に連れられて「早稲田祭」に来た。文学部にある記念講堂で「原信夫とシャープス&フラッ

ツ」の生演奏を聞いた。教室で何とか研究会の訳のわからない難解な説明も聞いた。大隈重信公

の銅像や演劇博物館を見学した。どれも14歳の少女には強い憧れとなった。その後3歳上の兄

も早稲田に入学した。早慶戦は何度も行って早稲田を応援した。高校3年生の秋には、後にも先

にもあれ程のハンサムな男性はいなかったと思う程の「絶世の美男」(擦れ違った女どもが皆振

り返る)のボーイフレンドと一緒に早稲田祭デートをした。彼は理工学部、私は文学部志望で受

験の下見的な意味もあった。なのに半年後、私は池袋の大学に通い始めた。だからという訳では

ないが、16年前から早稲田の街に住んでいる。

ある日、新目白通り側キャンパスの一番端にあったテニスコートが無くなり、その上にホテル

の建設が始まった。大隈会館の跡地にはビル型の新・大隈会館。テニスコートの跡地には、リー

ガロイヤルホテル早稲田が建つという。リーガロイヤルホテル? それは、私の人生でも思い出

深いホテルである。昭和54年だったろうか、東京で成功した情報誌の関西版を創刊することと

なり、あろうことか私は東京、関西の両方の編集長になってしまった。1週間の予定は毎週月・

火は東京、水〜金曜日は大阪というハードなものだった。その頃は半分以上ホテル生活をした訳

で、それはそれで書きようがあるが、余りに昔のことだから書かない。一応創刊前の仕事を徹夜

続きで終えようとした時だ。当時のオーナー社長かつ創業者が私にこう言った。

「夢子ちゃん。まさか創刊のパーティをロイヤルホテルでやろうなんて考えてはおらんやろね。

あそこは関西人にとっては大阪の「帝国ホテル」や。敷居いうか格式が高い。今よちよち歩きの

事業がお借りするようなホテルとちゃうんよ。「いつかロイヤルホテル」だから。うん、格がち

ゃう。どうやろな、10年、20年ガンバってそこで何とかロイヤルさんでお願いできるように

なるか、そりゃ、あんたの頑張り次第や、うん」。その時私は固く決心した。「なるべく早く大阪

のロイヤルホテルでパーティをやる!」。確か2年後には大勢のお客さまをご招待しての賑やか

なパーティが実現した。リーガロイヤルホテルは私の憧れであった。

憧れた大学の地に、憧れたホテルが出来る。しかも私は大のホテルファン。これで興奮しない

方がおかしい。平成6年の5月、リーガロイヤルホテル早稲田は完成し、そしてオープンした。

自宅から徒歩4分でも泊まらねばと考えた。が、その頃持病の腸が大暴れして宿泊をしようとし

た頃は自宅で唸っていた。泊まらぬままホテルと自分の関係がいつの間にか出来上がり、お気に

入りのパンを買いに、客が来るならケーキを買いに、酒を飲むならバーに、そのうちヘルスクラ

ブの会員にもなって、週のうち3〜4回はこのホテルのお世話になっている。

    

日常の存在

胸突坂を降りて神田川にかかる駒塚橋を渡ると、新目白通り方向にリーガロイヤルホテル早稲

田が正面に見える。この景色が好き。ことに冬。イルミネーションが美しいクリスマスシーズン、

正面玄関で裾の長いコートに身を包み、客の出入りのサービスをするベルスタッフの姿はいい。

アプローチに大きく迫り出した屋根の下、寒さで時折白い息が彼らの口元から吐き出される情景

は絵になる。彼らの寒さを無視するとして、暗い寒空に、そこだけほっこりと暖かい火が待って

いるような印象を抱かせる。これってホテルの魅力の基本。都内にも一流ホテルと言われるとこ

ろは数多いが、大きな道路に正面玄関が面していて、迎え入れの様子が誰からも容易に見えるホ

テルはそれほど多くない。「利用出来る人だけ敷地内に入って来なさい。そうじゃない人は来な

くて結構」という威圧感のあるホテルってありますよね。

ドアやベルの方々の態度はよろしい。いつもニコヤカ。でも週に何度も行く私の顔は覚えてい

ない。そこがよろしい。ヨーロッパの老舗・超一流ホテルの名物ドアマンは、一度滞在した客の

名前をすべて記憶して何年経ってから行っても即座に思い出す、なんてエピソードを読んだこと

がある。それが一流のサービスでもあり、しかし、客によってはそうでない場合もある。大阪に

リッツ・カールトンがオープンして間もなく、出張の折2泊した。大阪に着いてすぐ仕事が始ま

り、深夜まで予定がびっしり。仕方なく途中でホテルに寄り、チェックインだけ済ませ荷物を預

けた。待たせていた車に乗ろうとすると「夢子さま、行ってらっしゃいませ」と言うではないか。

う〜む、リッツ・カールトン、オヌシなかなかやるのう。素面での仕事が終わり、宴会仕事に突

入。2軒目、3軒目。その時ふと気がついたのだ。イケナイ!これ以上飲むとリッツ・カールトン

に帰った時困る。車を降りて正面玄関に大の字で寝ていたとしたら「夢子さま、起きてください。

お風邪を引きますよ。○○号室までお運びしましょう」なんて事態になったらどうするのだ。敵

は私の名前知っているもんなぁ。そこで飲むのをヤメルという英断?を下し、私は緊張しながら

ホテルに帰ったのだ。挨拶されたら「おやすみなさい」くらい言わなくちゃね、なんて考えなが

ら。正面玄関前には誰もいなかった・・・・。名前なんか覚えて欲しくない客もいるのだ。次の

大阪出張から、それまで何十回泊まっても知らんぷりしてくれる(ほんとに知らないんだけどね)

ホテルに戻ることにした。

1階の左手にケーキ&パンの「メリッサ」の売店、その奥にコーヒーハウスの「コルベイユ」

がある。メリッサのパンは大好きで、我が家の冷凍庫は常にこのパンが入っている。友人宅での

ホームパーティにお呼ばれした時はお土産にするし、夜一緒に飲みに来る友人にも必ずという位、

バーに行く前にメリッサに立ち寄りプレゼントする。友人達にも好評である。バゲット人気が高

いが、私が好きなのは1斤単位の山食パンとベーコンエビ。コルベイユは、昼間ヘルスクラブに

来た時の遅めのランチを取ることが多い。週替わりのお料理かパスタを選び、サラダ・パン・デ

ザートがバーになっていて、とてもお得である。サラダの材料も多いしね。ここのメニューには

お料理のカロリーが表示されていて、親切。親切だが、食べようとしたものが1000カロリー

とあって方針を変更する人も多いのだろうな、と想像する。ちゃんと栄養の実態を理解しての食

事は大事です。関係ないけど、以前ローソンのお弁当やおにぎりはすべてカロリーが表示されて

いたのに、ある時から方針が変わって表示の無いものが多い。私は高カロリーのものは表示しな

い、そうでないものだけ表示しているのではないかと深読みをする。また全品表示してくれない

かしら。話をホテルに戻し、コルベイユでは毎月のようにフェアをやっている。

メリッサとコルベイユ メリッサのケーキ

白い大理石の広いロビーを抜けた真正面奥は素晴らしい空間。吹き抜けの正面がガラス窓とな

り、そこから大隈庭園の緑が美しく目に飛び込んで来る。大隈庭園にほんの少しハミダシテしま

った代わりに、庭園の美しさを存分に味わってねというような作りになっている。ここはその名

も「ガーデンラウンジ」。落ち着いた雰囲気で、お茶とケーキを楽しみ、夜はアルコールを飲むこ

とも出来る。窓と反対側の吹き抜けは、宴会場の廊下になっていて、結婚式が多い週末など、披

露宴に出席するお客がラウンジ・ガーデンでお茶を飲み、ふと見上げると吹き抜けの廊下を着飾

った人々が談笑しながら歩いている。結婚式と言えば、このガーデンラウンジでも、望めば結婚

式を挙げることが出来る。宿泊した翌日、ここで結婚式をするカップルがいるらしく、結婚式場

のセットがなされていた。大隈庭園を背に祭壇があり、赤い絨毯のバージン・ロードが目に鮮や

かだった。

このラウンジは、コルベイユより料金が少し高い。隣接しているメイン・ダイニング「ガーデ

ン」と同じ調理場なのだそうで、ケーキの種類もメリッサとは違うようだ。一度お茶を飲んだ時

にラウンジ・ガーデンのスタッフに質問してみた。「はい、こちらでお出しするケーキとメリッサ

のケーキは違います。こちらではレストランガーデンのパティシエがフレンチレストランの分と

一緒に作っておりますので」と答えながら、心なしか胸を張った。あらら、私メリッサのケーキ、

とても好きなんだけどなぁ。同じホテルの飲食部署でも格付け意識みたいなものがあるのだろう

か。それとも単純なライバル心? 大昔一緒に仕事をした方が、人事異動でホテルの担当となり、

今やホテル業界ではちょっとした有名人になっている。盛岡で潰れそうだったホテルを再建し、

2年前から福岡の巨大なホテルも手懸けられて。先日雑誌を読んでいたら、その方のインタビュ

ー記事が目に止まった。ホテル再建の有効な手法を聞かれて「この環境下で大事なことは会社の

総合力を発揮することだ。その点で部門別会計はマイナスに作用しかねない。私のホテルでは、

フレンチレストランのお客さまに「今度はぜひ和食のお店に」と勧めている。料理飲食部門全体

の業績が上がることが、部員の評価につながる仕組みにしているからだ」と答えていた。なかな

か良いこと言っているじゃん。やっぱり実績のある人の言葉には重みがある。ケーキに関する

答えの1つを取り上げて、このリーガロイヤルホテル早稲田の料飲部門が身内競争をしていると

は思わないが、万一少しでもあるのなら、改善した方が客の立場では嬉しいけどね。

ラウンジガーデンのカプチーノ

「レストランガーデン」

さて、宿泊した日の夕食はメインダイニングの「レストランガーデン」にする。何度もこのホ

テルで食事をしているが、ここは初めてである。午後6時に予約した。ラウンジの右隣にレスト

ランの入り口がある。店内はほの暗い落ち着いた雰囲気で70席。この日は曇っていたが、天気

の良い日なら庭園に面した窓から夕陽が差し込むのだろう。勤務先の若い女性とメニューをしっ

かり吟味する。おっ! 結構お安いではないか。イタリアンなら気楽、フレンチは値段も態度も

「お高くとまっている」ようなイメージがあるのだが、ここはそんなことはない。とても注文し

やすい工夫がなされている。料理を前菜、肉料理、魚料理から2品選べば6千円、3品なら8

円、4品なら1万円。これに和食ならお通しのようなオードブルとパン、デザート。お茶がつく。

但し、素材によってはプラス1500円必要なスペシャルの料理もある。寸前までプールで2

人とも泳いでいたので、羊1頭でも食べられそうな空腹。3品が良いか、それとも4品にしよう

かと相談している所にサービスの方が「3品をお選び頂きましたら、ボリューム面で十分ご満足

頂けると存じます」。「そう、じゃ3品」ということで羊1頭計画はアッサリ捨てて、料理を選ぶ。

先ずは前菜の中からホワイトアスパラガス、同じく前菜のスペシャル料理、フレッシュ・フォワ

グラのソテー、肉料理からつぐみを注文した。彼女はフルーティな白、私はだんだん重いワイ

ンにしたいから、最初は少し軽めの赤ワインをソムリエにお願いした。缶詰のホワイトアスパラ

ならお馴染みだが、生のそれを食べる機会は少ない。楽しみにしていたが、ちょっと硬くて、横

に切れない。仕方なく縦に長く3分割して折りたたんで食べることに。同じ皿を注文した彼女を

見ると、同じように食べていた。次のフレッシュ・フォワグラのソテーは絶品で、ことにソース

が深く重くバランスも取れていて、実にうまい。フォワグラが無くなっても、フランスパンで拭

ってキレイに食べ尽くした。2杯目に勧めて貰ったイタリアワインを気に入ったので、3杯目も

同じものを注文すると、ソムリエ氏とても嬉しそうだった。

メインデッシュを食べ終わるとデザートタイム。静々とデザートワゴンが寄って来て、「さぁ

どうだ、何を食べるんだ、」という悩ましい時間となる。悩ましいなんて今でこその話で、10

年程前までは食後の甘いモノは基本的に拒否していた。未だ酒を飲みたい。なのに甘いケーキや

フルーツを食べろという。あの頃は愛嬌に欠けていたなぁと反省は多いが、グラッパなどをちび

ちび舐めながらケーキにぱくつく人を眺めていた。今は違う。甘いものが苦手だった亡父と同じ

ように、ある年齢から急に甘さを身体が求めるようになった。たくさんのケーキやフルーツが誘

惑する。サービスの方、それぞれの説明を終わるとじっと客の選択を待っている。デザートも売

りの1つにしているオテル・ド・ミクニまで行かなくても、もうちょっと「よろしかったら全部

召し上がれ」という態度が欲しいなぁ。たまに「じゃ全部」という人もいるかもしれないが、そ

れ程食べられるものじゃないもんね。出し惜しみしない態度が重要デス。さてここでは、ケーキ

のカットがとても小さかったので、前述したメリッサとは違うケーキの魅力を感じるまで行かな

かった。そういえば、レストランの予約した時、こんなことがあった。このホテルでは内線の電

話がどの客室からという表示が無いらしく「夢子さま、レストランガーデンでございます」とは

言わない。言わないホテルも多いからそれは良い。「喫煙できるテーブルはありますか?」と聞

いたら「はっ? キツエン?」「えぇ喫煙」「キツエン?」「ですからね、煙草を吸えるテーブル

があるかと伺っているんです」「はい、あります」。という具合で、キツエンが何を意味していた

のかは納得して貰えなかったようだ。逆に「お料理は?」と聞かれて、今度は私がたじろぐ。「そ

れはそちらに伺ってメニューを拝見してから決めます」。せっかく素晴らしい空間、美味しいソ

ース、ワインがあって料金も手頃なのだから、細かいことに気を遣ってくれるともっともっと人

気のレストランになるのになぁ。

快適な居住空間

地下2階、地上12階建てのうち、6階からエグゼクティブフロアーの11・12階を含んで

127室の客室がある。各階のエレベータホールには、何故か黄緑色も鮮やかな公衆電話とその

奥に椅子のセットが置かれている。レースのカーテンをそっと覗いてみると、果たして我が家が

見える。そりゃそうだ、家から見えるんだもん。今見たことは頭から締め出してホテルライフを

楽しもう。今回私が泊まったのは、609号室、6階の突き当たりのコーナーダブルルームであ

る。廊下の両脇にはたくさんの絵画が掛かっていて、それを楽しみながら部屋に向かう。

大隈庭園に面した部屋で、大隈講堂や緑に溢れた庭園がすっぽりと眼下に臨める。パンフレッ

トによると、ここの客室はイタリアンクラッシックでまとめているのだそうで、ついでに言えば

「セラーバー」は英国調、日本料理の「なにわ」は別として館内全体をヨーロピアンな雰囲気で

作ったのだそうよ。シングル8室、ダブル39室、ツイン78室、特別スイートルーム2室で、

スタンダードは38u、デラックスは50uの広さである。コーナーダブルの部屋からか、普通

のダブルとはレイアウトが変わっていて、そこが新鮮に感じる。部屋を入ると右側にお茶のセッ

トやグラスが置かれ、その下は冷蔵庫とセイフティボックス。その奥にちょっと狭いクローゼッ

ト。左手にダブルベッドと窓側にデスクと椅子、チェアが置いてある。ベッドの左奥がバスルー

ムで、正面に洗面台、右のトイレはドアで仕切られている。洗面台の左手はいきなりバスタブが

あり、ちょっとびっくり。アメニティは、コットン、石鹸、シャワージェル、シャンプー、トリ

ートメント、ブラシ、シャワーキャップ、綿棒、歯ブラシ、髭剃り、櫛、それに男性用にヘアト

ニック、ヘアリキッド、アフターシェービングローションが用意されている。男性のビジネスユ

ースを意識し、しかしデザインを小さな花柄にするなど女性受けもしたい気持ちがわかる。ヘル

スメーター、椅子、衣類籠、バスローブ、拡大鏡なども女性を意識しているなぁ。

 私は変な所に感心する人間なのだが、このホテルの備え付けのお茶がとても気に入った。普通

は煎茶とほうじ茶くらいだが、それに加えて、昆布茶と梅昆布茶が用意されているのである。嬉

しいねぇ。お湯もこんこん沸いていました。このお茶を置いた台の壁面は大きな鏡が付いている

が、ゆったりした気分で豊かな飲み物を約束しているようでいいね。冷蔵庫の中はそれほど種類

が多いとは言えないが、ウィスキーやワインも含めて飲み物の値段が安くていいね。

  

 その晩、マッサージを頼んだ。2夜連続でマッサージをしていたので、今夜は止めようと思っ

ていたのだが、「浪越式指圧」が出来るというのでその気になってしまった。浪越徳次郎さんは

亡くなったが、それがどんなものか試してみたいではないか。まさかこんなに近くで受けられる

とは。電話で申し込むと到着するのに小1時間掛かるという。いいですよ、と鷹揚に言うが待つ

間にだんだん眠くなる。やがて男の方がいらして、ベッドの「ヨコ」に横たわるように指示され

る。つまり普通に寝る姿勢から90度ずれる訳ですね。さぁいよいよ「浪越式指圧」が始まった

という所で記憶が途絶え・・・・。「終わりました」の声に慌てて起きたが、気を悪くする風も

なく「ストレッチはなさいますか?」「は、はい」「それでは、この資料を差し上げますから参考

になさってください」と物静かな紳士は去って行ったのであった。あぁ、情けない。今度素面で

「浪越式指圧」の実態を知ってみたい。

 私はどこに行っても供え付けの印刷物をチェックする。読む目的は「知りたい」から。で読ん

でいるといろんな不整合に気がつく。さっき言っていたことと違うでしょ、とか誤字が多いなぁ

とかで校正係りになる。もう「ゴウ」と言ってもいいかもしれない。この日もたくさん見つけま

したぜ。館内のレストランの営業時間が何箇所かに出て来るのだが、一つとして正しいものがな

い。チェックイン時渡されるキーカバーの印刷物でも、ガーデンの閉店時間とセラーバーの開店

時間が違っていましたよ。それに4月の行事のチラシは、もう5月の3日なのだから外して欲し

いですよ。

 文句ついでに言えば、ホテルに到着してのチェックイン。最小限の荷物を背中に張り付いたよ

うなリュックに入れた軽装。入り口の右手がフロントでチェックインをするのだが、お客は低目

のカウンターに腰掛けて手続きをする。それが2台。既に2組のお客が座っていたのでぶらぶら

しながら待つ。1組の客が案内を受けて去っていく。次は私ね? と思うのだが、誰も「いらっ

しゃい」とも「お待たせしました」とも「チェックインでございますか」とも「どうぞこちらへ」

とも声を掛けてくれない。困ったなぁ。こう見えても内気なんよ。待っていても仕方ないので、

おずおずと「泊るにはこの椅子に座って何かするのよね」なんて頓狂なことを口走る。今まで大

きな柱くらいにしか思っていなかったのに、それが客だと知って大いに慌ててはくれた。今回は

何とかプラン。1泊&コルベイユの朝食とヘルスクラブつき。朝ご飯は和食の「なにわ」で食べ

たいし、ヘルスクラブは元々会員だから私には余り意味のないプランなのだが、普通の優待より

安いからそれにした。どこのホテルでも頼む「そば殻枕と毛布2枚ベッドメーキング」は既にこ

の時点で出来ていないことがフロントで判明。プールに行っている間にセットしてくれればいい

と、飽くまでも鷹揚な私なのであった。

和を任せてと「なにわ」

 ホテル全体がヨーロピアン調の中で、ひとり和を背負う「なにわ」。ロビーから左手の奥の位

置に見事な竹林に面してある。大隈庭園に昔から在った「完之荘」がすぐ傍にある。懐石、鮨、

鉄板焼があって、それぞれがコーナーを築いている。普段この鉄板焼の愛好者で、内容と値段を

考えるととてもリーズナブルだなぁと思っている。友人の中には、ヘルスクラブにゲストとして

来て、この鉄板焼を食べ、隣のバーに行くことを「フルコース」と考えているけしからんご仁(女

性をご仁とは言わないわね)もいる。例えば(というか私はそれしか注文したことがないのです)

鉄板焼の椿コース。

        山盛りの焼にんにく  これが肉のベッドになるパン

 日替わりのオードブル一皿、ニンニクは好みで焼いて貰い(私はいつも「山のように」と頼む)、

薄切りの食パンがうっすらと焼かれて肉のベッドとなる。そこに2度に分けて焼いた肉が乗せら

れ、ベッドのパンや美味しい肉汁をたっぷり吸い込むのです。ワカメと野菜たっぷりのサラダ、

サツマイモなどの焼野菜、脂身もじっくり焼かれて供される。さぁいよいよパンのベッドのお出

まし。いろんなものを試したけど結局これに落ち着いたというエノキだけを炒めて炒めて、肉汁

たっぷり吸い込んだパンにクルクルと巻き込んで食べるのです。これでマズイ訳ないよね。そし

て好みでガーリックライスを注文。最後に客に味見をさせて「ガーリックライス・テースティン

グ」。ご飯と赤だしと漬物で食べた後は、席を移してデザートとお茶を頂くという椿コースは1

万円です。

 今朝は和定食を頂くことにする。ジュースの種類とご飯かお粥を選んで選択完了。焼き魚、卵

焼き、煮物などが大きなお盆で登場。ご飯はお櫃に入っていて嬉しい。味と料理のバランスは、

まぁ普通でしょうか。部屋の印刷物に「季節によって多少お料理が変わります」とあったが、そ

れは逆で「毎日食べても飽きないオカズがいつも変わる定食」を目指して欲しい。

 このホテル「土地信託方式」という契約上に則っているのだそう。何それ?ですよね。早稲田

大学のホームページでちょっと勉強した所によるとこういうとらしいのです。早稲田大学は老朽

化した大隈会館の立て替えをしたい。しかし建築予算がなぁ。そんな時「こんなエエやり方がお

まっせ」と土地信託方式を知り検討する。ある一定の期間大学の土地を信託銀行に貸与し、入っ

て来る賃料を会館建設にかかった費用の返済に当てる。信託銀行はそこにホテルの建物を建設し

てホテル側に貸与する。ホテル側はそこでホテルを運営し、家賃を銀行に支払う。ってことらし

いのですよ。一定期間は30年で、私が泊まった時がちょうど開業7周年だったから、契約残存

期間は23年あることになる。契約期間が過ぎると、土地も建物も早稲田大学のものとなり、大

学が直接ホテル経営をすることは無いと思うが、その後のことはわからない。そんな経緯で出

来たホテルだから「早稲田大学の迎賓館」という呼び名もあり、2階から4階までの大小宴会場

では、各層の同級会など会合が盛んに行われている。5階には「早稲田倶楽部致遠館」というの

もあるそうよ。

 もちろんこの大小宴会場では結婚式も盛ん。プールにふらりと行った日がブライダルフェアの

夕方だったりすると、大勢のカップルに遭遇してバツが悪い。「ねぇ、どうする?」なんてコチ

ョコチョやっている幸せ一杯のカップルの間を「さぁ泳ぐぞ」の意気込みで服装なんかちっとも

頓着していないオバサンがぬって歩くんですからね。

 一度も使用したことが無いのだが、地下1階に「カラオケルーム」がある。15人部屋が2つ、

10人部屋が1つの計3室。予約すれば簡単なパーティ料理も頼めるそうよ。いつか大勢集めて

歌っちゃおうかな。

心のオアシス「セラーバー」

 オープン以来このホテルに出入りをしているが、最も頻繁に利用するのが、このセラーバー。

英国風のシックなバーとパンフレットにある。英国ではパブには何度か行ったことがあるが、押

し寄せた大勢の客に混じって生温いビールを買って押し合いへし合いの立ち飲みだったから、あ

んなのに似ることはないね。「近所にバーなどない」という判りやすい理由で来始めたが、ちょ

くちょく通うようになったのはある商品が強い誘因となった。それはベルギービール。デュベル、

ヒューガルデン、アレキサンダーの3種。この中でアレキサンダーの存在は最近まで知らなかっ

たから正確に言えば2種である。

   

デュベル    ヒューガルデン    アレキサンダー

デュベルは「世界一魔性を秘めたビール」という別名を持ち、泡を楽しみ、その後濃厚ながら

あっさりとしたビールを味わう。アルコール度8.4%。ヒューガルデンは、別名を「禁断の果

実」と言い、ビールのラベルもエデンの園のアダムとイブが描かれている。リンゴの酸味を利か

せたこれも濃厚なビール。都内にはベルギービールの専門店もあるようだが、このビールを飲み

たさに、ついセラーバーにやって来る。大勢の友人をこのバーに連れて来たが、ほとんどの人は

デュベルかヒューガルデンが好きになる。ゆったりとレイアウトされた客席は55席。ソファと

椅子の組み合わせ、椅子4つとテーブル、大勢のグループ用にもなる大型のセットなど用途に応

じて選ぶことが出来る。

バーに入った右側にグランドピアノが置かれていて、毎晩2〜3回ピアノの生演奏が楽しめる。

毎週木曜日はギター、そして第4木曜日はギター、ベース、ピアノのトリオの演奏日でこれが

また楽しい。ヘルスクラブで運動した直後に1人で来る時や特に話は無いがうまい酒を飲もうと

いう2人連れの時などはカウンターに座る。空いていれば右側の一番隅がお気に入りの席。デュ

ベルを2杯飲んだ後は、タンカレーのジントニックというのがお決まりのコースだが、つまみも

だんだん固定化して来た。お腹がいっぱいの時に頼むのは、オレンジピールのチョコレート、枝

つき干しふどう、おかきなどだが、食事がてらの時は、オイルサーデン、野菜スティック、マル

ゲリータピッツァ。毎月のお勧め料理もいくつかあって、調理場が直結した「コルベイユ」で作

られる。

大勢で来た時は、何を飲んでも食べても、ワイワイ盛り上がって楽しい。酒場で大事なのは、

1人でふらっと来た時、放っておいて欲しい時はそっとしてくれ、話し相手が必要な時には適当

に相手になってくれるかどうか。どんな状況の客もそっと包み込むような空気があって、嬉しい

酒や安堵酒、哀しい酒、ツライ酒、待ち侘びた酒が夜な夜な進んで行くのであります。私のよう

にただただ飲みたくてという輩には酒が進み過ぎていけませんぜ。そんな私がすぐ帰る時という

のは、葉巻客が来た時。シガーファンには嬉しいバーなんでしょうがね。このバーでは婚礼シー

ズンの土曜日の午後など両家控え室や二次会などにも活躍している。

健康を約束ヘルスクラブ

 以前、ここのプール券を3枚頂いた。やはり近くのホテルの総支配人から。きちんと3回来た。

ホテルのヘルスクラブというには、余りに本格的なプールに心底驚いていた。昨年の秋、誕生日

を前に考えた。21世紀直前の誕生日に何をするか。一番自分らしくないことをして「新しい自

分」を手に入れるのもいいなぁ。そうだ、ヘルスクラブだ、という簡単なプランが出来上がった。

実を言えば、その3年前に生まれて初めてのスポーツクラブには入会していた。新鮮な刺激にせ

っせと通ったのだが、膝を痛めて運動禁止になり、そのままになっていた。今度は正しい運動で

長続きしなくては意味がない。長続きは辞めないということと、きちんと通うということ。当ホ

テルのヘルスクラブの入会金は100万円、預かり金200万円、年会費30万円。た、た、高

い。高いからヤメラレナイ。以前のスポーツクラブは歩いて15分かかった。ここは徒歩3〜4

分。遠いとは言えない。通うのが面倒とは言えない。という訳で、入会の申し込みをしたのだが、

書類審査と健康診断を受けないと許可されないとか。健康診断は、ヘルスクラブの上にある「戸

塚ロイヤルデンタルクリニック」を予約し2万5千円也を支払って受ける。その結果入会を認め

られなくても検診代は払うのだ。普通の健康診断に加えて、運動時の心臓の負荷状態などを何人

もかかって調べられてシンドカッタです。ま、体重過剰以外は悪いところもなく無事入会の運び

となった。

 入会前に体験が出来る。プールは知っているから先ずはジムに行ったのだが、いやはや皆さん

親切疲れた。ジムに行くと「こんにちは〜」の挨拶に迎えられ、体重と血圧測定。インストラク

ターが1人ついて運動前のストレッチ。これがたっぷり。この後その日会員のやりたい運動に入

るのだが、初めてとあってこらに設置されている器具についてじっくり説明を受けながらやって

みる。会員は一人でせっせ派もいれば、インストラクターの助けを借りながら派もいて、楽しそ

うだ。次にプールに行くからとジムを出ようとすると「それじゃあ仕上げのストレッチをしまし

ょう」とこれまた丁寧たっぷりのストレッチでヨレた。プールに行く前に再び着替えて、リラク

ゼーションルームで一服したい。ところがいつもある灰皿が置いていない。オカシイなぁと思い

ながらプールに行き、体験は終了した。正式入会の手続きをしている時「灰皿が置いてなかった

んですが」と質問すると、言いずらそうにマネジャー氏「いろいろ会員さま同士でありましてね

ぇ、1ヶ月半前から禁煙になったんです」。!!!「じゃヤメル」と言いかける程の衝撃。ジム

&プール&風呂全部行くと3時間コースとなって、私の禁煙我慢時間はオーバーする。よって入

会してジムには1度も行かないことになってしまった。時間帯でキツエンを認めるとかどっか小

部屋でも作ってくれないかしらん。ヘルスクラブのことだから「煙草吸いたい」と声高に言えな

いけど、要は「分煙」すればいいんでしょ? 宿泊客は、プール&サウナなら3千円、プール&

サウナ&ジムは5千円で利用出来る。

    リラクゼーションルーム ここから灰皿が消えた!

 ここのプールは凄い。オリンピック選手だって養成出来そうな本格的な競泳用のプールである。

ゆったりとしたコースが5本。満々と満たされ水深は1メートル30。私は泳げるようになった

のはつい最近で、もっぱら水中ウォーキングをしていた。身長にもよるが、私の身長で水中ウォ

ーキングをやるには水深があり過ぎる。長い間やると腰痛や膝を痛める恐れがあるのだ。しかし

それにはちゃんと対策がなされていて、第一コース(私が勝手にそう言っているだけ)には、ち

ゃ〜んと台が設置されていたのでありますよ。この上なら腰程の深さになって負荷が激減し、走

ることだって出来る。プールを囲うようにデッキ型チェアが並べられ、右手奥の窓際には少し深

めのジャグジー。窓の外には大隈講堂の時計台、その遥か向こうに新宿パークハイアットのネオ

ンが見える。泳ぎ疲れてこのジャグジーに長々と浸かっていると浮世を忘れるよう。

ジャグジー     ウォーキング用の第1コース  ゴーグルもキャップもある

 プールの周囲にもいくつかの施設がある。「タンニングルーム」日焼けするとこね。滝シャワ

ーがあって、シャワーが落ちて来る所に肩を当てると実に気持ちが良い。交互に繰り返すとマッ

サージ入らずになる。左手奥には、採暖室。左手手前には、事務室があって、必ずインストラク

ター(主にお兄ちゃん)が常駐している。夜の空いたプールでぽっかり水に横たわり足を動かし

たら進んだ、というのが背泳を独学することになったキッカケなのだが、プールの中ほどに明か

り採りの大きなガラス窓があり、夜は鏡となる。おずおずと腕を動かす姿がこの天井の鏡に映っ

て、とても役に立った。

タンニングルーム   うたせ湯     採暖室   インストラクター氏  プールの天窓

 泳ぎ疲れても歩き疲れても、会員は「今日はこれだけ運動しました」とリストに記録を残して

風呂場に向かう。5つの洗い場と大きな湯船、ミストとドライの2つのサウナが併設されている。

ここでさっぱりした後、バスローブを着て隣のパウダールームで各自好きなことをして、そのま

た隣のリラクゼーションルームで一服(と言っても煙草の一服はダメなのです、クドイね、私も)。

冷たい飲み物、温かい飲み物を自由に飲みながら、テレビを見たり、新聞・雑誌を閲覧したり。

ん?ご意見箱があるなぁ、じゃあ分煙の提案をしようか・・・・と本当にクドイ私なのでありま

す。煙草のことはやっぱり納得出来ないのだけれど、ホテルでの本格的なヘルスクラブを初めて

手がけたのがロイヤルホテルとあって、その伝統や技術はしっかりと生きているので

ありました。

 こうして一番身近なホテルの「初滞在」が終わった。今まで自分が知らないことも結構あって、

実に楽しい滞在だった。やっぱり、ホテルっていいですねぇ。

                                   おしまい

データ:

リーガロイヤルホテル早稲田 

169-8613 東京都新宿区戸塚町1-104-19 

電話:03-5285-1121  ファックス:03-5285-4321

行き方/東西線「早稲田」から徒歩7分  JR「高田馬場」戸山口からシャトルバスあり

泊まった日/2001年5月3日    書いた日/2001年5月

使用した写真は滞在中撮影したものに加え、日頃撮り溜めた写真も入っています。

                 ホテル日記のトップに戻る    夢子倶楽部のトップに戻る