夢子のホテル大好きシリーズ

ザ・リッツカールトンバリホテル&リゾート

ホテルの中の我が家ヴィラ

 私達の部屋、いや家は1020号。36棟あるヴィラの1ベッドルーム・オーシャンビュウ・

ヴィラの1つである。ホテルの正面玄関から美しい庭園の中をぶらぶら歩いて4〜5分。海に近

いエリアにはヴィラが続く。1戸ごとに門構えがあり、門の左側には来訪を告げる銅鑼が下が

っている。ホテルの客室係や清掃スタッフはこれを「ボ〜ン〜」と鳴らす。案外大きな音が響

き、家の中からも十分に聞こえる。何かの理由があって、誰にも来て欲しくない時には人形の

ようなものをぶら下げておけば、遠慮してね、という仕組みだ。私達女性2人組には、特段来

て欲しくないこともなく、一度も使わなかった。細い両観音開きのドアを開けて敷地内に入る

と、真っ直ぐ進めば海側の庭園に、左手には家がある。地面には真四角に切られた石が敷き詰

めてあり、日本の格子柄を思わせる灯篭にはヒトの髪の毛状に植物の藁を被せ、その上に王冠

のようなものが乗せてある。数日間、この家が我が家だ。

  

  

  これが「入ってこないでね」の人形札    右手をまっすぐに進むと庭に出る

建物に入るとそれまでの暑さが嘘のように心地良く涼しい。入ったところがリビングルーム。

大きめのソファとゆったりしたチェアが2脚。左手には、冷蔵庫や大型のテレビ、インドネシ

ア音楽のCDも備えたCDプレイヤー、グラス収納庫などがある。天井は10メートル近くあ

ろうかと思われる高さで、切り妻部分の長い木片には人物の絵が描かれている。煙草の煙もこ

もらず、高い天井は良いなぁ、と思う。その替わり、昼間は良いのだが、夜になると2つのス

タンド以外に天井からの照明が遠いために暗くて本を読むには適さない。冷蔵庫にはシャンパ

ンや飲み物、スナックなどががぎっしり。右手の収納棚にはワインや大きなグラス類が揃って

いる。冷蔵庫の上にはお茶のセットがあって、ティーサーバー、湯沸しポット、大きなボトル

のミネラルウォーター、トラジャコーヒー、紅茶、日本茶なども揃っている。湯沸しポットに

水を入れてスイッチを入れるとたちまちにしてお湯が沸く。ミネラルウォーターは毎日補充さ

れるので、生水を飲めない暑い国ではお約束の水の確保をしなくても良いのが何とも嬉しい。

インドネシアのCD1枚を滞在中ずっと聞いていたから、耳に残って忘れ難いアルバムになった。

中央の仕切りに続いて寝室がある。ツインベッドにはそれぞれオーガンジーのベールの天蓋

つき。一度キャノピーつきのベッドで寝てみたいと思っていたから「ワァ〜イ!」と素直に声

を上げる。蚊もいるということだが、ベッドの正面は開いているから蚊帳の役割は果たせそう

にない。リビングルームにあるテレビと背中合わせの形で、寝室にもテレビがある。テレビの

収納扉が素晴らしいデザインで思わず撮影してしまった。ベッドはかなり高く、旅の道連れのS

子さんは小柄だから、毎晩よじ登る恰好だ。ベッドは硬くて寝心地が良い。2つのベッドの間

にはナイトテーブルがあり、毎晩編んだ容器にバリのお菓子を準備してくれるのだが、小さい

蟻がたくさんたかっていて、一度も食べることが無かった。ベッドの脇にはスリッパを置く茣

蓙のような敷物があり、バリ独特の柄を染めた布製のスリッパが備えられている。寝巻きとバ

スローブを兼ねるのだろうか、これもバリ柄の少し長めの半纏のようなガウンが毎日準備され

る。着いた日には、このベッドに白い花がたくさん散りばめられいて、その後も蘭の花が一つ

枕元に添えられていた。

 

 

寝室の隣は、左手が大きめのクローゼットが2つ並び、右手には明るい窓の下に書き物机と

スーツケースの台がある。リビングルームの照明が暗いので、夜の読書や書き物はここでやる

ことになった。クローゼットの右側はハンガーが20本ほどあって相当の収納力がある。左側

には引き出し形式の収納とセイフティボックスがある。2人で使うことになるので、4桁の数字

S子さんの身長の前にゼロをつけて使うことにした。0189? 草で編んだピクニック用

の籠にはバスタオルが2つと帽子が用意されており、プライベートビーチに出かける時に使っ

てね、ということだろう。荷物台の下にも引き出しはあるが、長期滞在だった場合、2人では収

納の余裕が少ないようだ。

木製の両観音開きのドアを開けると、何度も写真で見たステキなバスタブがあった。水を張

ったバスタブには赤と白の花を浮かべて。深夜のチェックインだったので、花の風呂の写真は

明るくなってからと思っていたら、朝食から帰ってみると、もう花はキレイに片付けられてし

まっていた。う〜ん、残念。悔しいので、午後ホテルの庭に落ちた花を2人で拾い集めて、オ

リジナル花の風呂を作ってみた。赤の花は少なかった替わりに、黄色の花をたくさん拾うこと

が出来た。一度このバスタブに入ってみたが、足を一杯に伸ばすことが出来て気持ちが良かっ

た。小柄なS子さんは溺れそうになった。バスタブだけ独立しているので、洗髪やカラダを洗

い流すためには、隣のシャワーブースに移動する必要がある。視覚的には素晴らしいが、実際

の使い勝手はそんなものだ。バスタブ奥正面の窓の外には蓮を浮かべた大きな水槽があって、

動物が大きく開けた口から勢い良く水を吐き出している。これも視覚的には美しい。

10畳位だろうか、ここは大きなバスルームである。左手の手前にトイレ、その奥にシャワ

ールーム、右手にはダブルのシンク。庭に続くガラス戸から外に出てみると、敷地の角に屋外

のシャワーまであるのだった。天井はリビング・寝室と同じように高く、ここにも絵が描かれ

ている。背中合わせのダブルシンクには椅子が置かれているが、椅子の高さに対して鏡の位置

が高いので、S子さんは座ると額までしか映らない。アメニティグッズは存外少なく、歯ブラシ、

シェーバー、シャワーキャップ、マウスリキッド、櫛、石鹸、コットン、綿棒、石鹸、ティッ

シュ。歯ブラシは柔らかくかなり大きい。大きすぎて奥歯を磨く時にはつい、オエッとなって

しまう程。一度使ったものをグラスに差して以降も使うつもりなのに、毎朝新しいものに取り

替えられてしまう。生水は飲めないのだから、歯磨きに困るなぁと思っていると、ちゃんとミ

ネラルウォーターが準備されているのだ。ドライヤーが無いと不思議に思っていたら、2日目に

引き出しに入っているのを発見。「こんなにわかりずらい所に入れなくても」と思ったら、ドラ

イヤーは引き出しに固定されている。体重計がある。何だか頼りないもので、乗ってカラダを

傾けると2キロ位は平気で変動してしまう。そんなに変幻自在の体重計だったら「あって欲し

い体重」にしてちょーだい。トイレは新しい建物というのにウォッシュトイレでは無かった。

それともウォッシュトイレって、日本だけの製品なのだろうか。タオルはふんだんに用意され

ていて、どのタイプも厚手。バスタオルは大きく、私でも1周半巻くことが出来る。大きな竹

の籠に使い終わったタオルはポンポンと入れる。こういう時に贅沢と思う小市民である。夕方

のターンダウンサービスには、新しいタオルに取り替えられる。ターンダウンサービスでは、

浴槽の上にアロマテレビーのオイルがたっぷりと用意され、火を入れてくれる。天井の高い広々

としたバスルームに何とも心地良い香りが広がる。

2人で拾い集めて来た花でオリジナルフラワーバスに

 タオルがたっぷり  シャワールーム    天井が高いでしょ?     アロマテラピー

 

 シャワートイレではありません    引き出し固定のドライヤー   アメニティグッズ

これぞ楽園・ヴィラの庭

つくづくヴィラを借りて良かった、と思ったのは庭を見た時だ。小さいながらも専用のプー

ルがある。そして東屋のバレ。正確には「BALE BENGONG」というようだ。畳で4畳半はた

っぷりありそうな広さに白いカバーを被せたマットが敷き詰められ、その上には寄りかかって

もビクともしない三角柱のような硬いクッションと柔らかな巨大な丸いクッション。バスタオ

ルも積み上げられ、ご丁寧に灰皿とマッチまで置いてある。さぁ、どうそここで昼寝をなさい

ませ、と誘っているようだ。三角柱に寄りかかって本を読む。その姿勢に疲れたら、丸いクッ

ションに頭を預けて寝そべる。そのうち眠くなって手からダラリと本が落ちる。そのまま昼寝

に突入だ。クークースヤスヤ・・・・。時折、風が全身を吹き抜ける。鳥が鳴いている。そこ

にあるプールに水が注ぐ音、その水が流れ落ちる音が聞こえる。また風だ。これこそ現世の楽

園だ。目が覚めたら、プールに入ろう。案外水は冷たい。プールの底には石が敷き詰められて

いる。深さは1メートル20センチほど。横は4メートル、縦5メートル強。背泳をすると左

右1度づつ手をかくとぶつかってしまう。歩こう。しかし4×5のプールを400メートル歩

いたら、目が廻りそうだった。プール際の寝椅子に横たわる。庭を一段下がったところには芝

生が広がり、南国らしい木々や花が美しい。その向こうはジンバラン湾が広がる。湾の途中に

かなり長く突き出た場所があるので何だろうと思ったら、時折飛行機が低空飛行をして着陸し

ている。そうか、あれはングラ・ライ国際空港なのだ。その向こうにはクタの街らしいものが

うっすらと見える。海はキラキラと光り、風がそよぎ、鳥が鳴く。ヴィラを借りて良かったな

ぁ。

 

          楽園にようこそ、バレです         本は睡眠薬 GGG・・・・

この庭から寝室側の通路を進んでいくと、突き当たりの角にアウトドアのシャワーがある。

大きな貝に水が溜まると落ちてくる仕組みのシャワーだ。振り返るとバスタブの真裏に水を吐

き出している大きな水槽がある。シャワーを浴びたら、竹製の干し台に水着を干して、そのま

まバスルームに入ることが出来る。シャワーを浴びて上を見上げると、吸い込まれそうな真っ

青な空だった。

96年生まれのホテル

 ザリッツカールトンバリホテル&リゾートは1996年の11月にリッツカールトンのアジア進

出第1号としてオープンした。ジンバラン湾の高台にある。バリ島はジャワ島とロンボク島の

間に位置し、カタチは歪んだ扇子のようにも見える。ジンバランはバヴォン半島、扇子の蝶番

部分の左側(西)にあると思えばいい。空港からは車で15分の距離だ。ジンバランの反対側

の東には高級ホテルが並ぶリゾートエリア・ヌサ・ドゥアがあり、空港の北側には繁華街のク

タ、スミニャックなどが続く。ここにも街の賑やかさとと海を兼ね備えたホテルが多い。北に

進むと州都デンパサールを経て、芸能・芸術の街ウブドがあり、ここにも高級ホテルがある。

バリ島は正式に言えば、インドネシア・バリ州。州には8つの県があり、州都はデンパサール

である。空港に出迎えてくれたホテルのスタッフが「ようこそジンバラン村へ」と言ったこと

でもわかるように、ジンバランは小さな素朴な村のようだ。海に近い方から「バリ・インター

コンチネンタル・リゾート」、「フォーシーズンズ・リゾート・バリ・アット・ジンバラン・ベ

イ」があり、とっつきの丘をぐんぐん登った一番奥にザリッツカールトンバリホテル&リゾー

トがある。それだけに外界から隔絶され、ホテルでずっと過すなら良いのだが、どこかに出か

けようと思ったら、足の確保をしなければならない。行きはタクシーで行けば良いのだが、帰

りの心配をする必要がある。広さは173エーカーあると言われても、東京ドームが幾つ分とか

他の土地を比較出来ないので実感がわかないが、車でホテルの標識を見てから随分走っても正

面玄関に着かない位広いということにしよう。全室323室。ビルディング、つまり普通の客室

はテラス、オーシャン・ヴュウ、ザリッツカールトン・クラブ、オーシャン・ヴュウ・スィー

トなどいくつかの部屋タイプ、そしてヴィラがある。3ベッドルーム・オーシャン・フロント・

ヴィラ1泊$2200なんて部屋もあるらしい。私達が借りたヴィラは1泊500ドル。これに税

金、サービス料を21%加算。4泊以上だとヴィラパッケージで1日28ドルプラスすると朝食、1

ディナー、1マッサージ、ベンツでの空港=ホテルの送迎、ウエルカムドリンクのシャンパン

サービスなどがあるというので、それにした。このヴィラは300平方メートルあると言う。い

つも1人で旅をし、1人でホテルに泊まる私だが、1人でヴィラを借りるのはいくらなんでも贅

沢過ぎると思っていたところにS子さんも行くという話になって迷いは吹っ切れた。2人で借り

れば、普通のビルディングタイプに1人で泊まるより安くなるからだ。折角行くのだったらケ

チってはいられない。人間、時によっては思い切りが必要だ。隔絶された場所だからこそ、ホ

テル内には様々な施設やプログラムがある。日替わりのプログラムには、ウルワツ寺院自転車

ツァー(4h・20ドル)、フィッシュマーケットツァー(15ドル)、お供物作り実演(無料)、イ

ンドネシア語講座(無料)、バリ舞踊実演(無料)、バリ衣装での撮影(30ドル)、エアロビク

スやヨガ教室(無料)といった具合である。正面玄関から見る、真正面に海に向かって一直線

に続くメインストリートの景観が素晴らしい。階段の下から池、その下にプール、そしてその

先に海と水の3段階が続くのだ。

   

  フロント 大ホテルのわりには小さい     見事なロビーの天井   ロビーでも民俗音楽の生演奏が    

    

    正面玄関から続くメインストリート   池、プール、そして海  下のプールの先は海を見る特等席

メインストリートの周囲には地面すれすれのところに池があり、ピンクの睡蓮が午前中可愛

らしい花を咲かせている。ヒンドゥー教の島らしく、ところどころに石灰石で作った宗教的な

彫刻も置かれている。正面玄関とロビーを真中に、宿泊棟が大きく腕を広げたように左右に広

がり、その海側にヴィラ棟が点在する。左手の宿泊棟の庭には18ホールのパターゴルフ場が

ある。庭にはブーゲンビリアやトロピカルフラワーがふんだんに植えられて、一年中花を咲か

せていると言う。主にヴィラの客用に使われるバギーが、庭内の白い道をちょこちょこと走り

廻る。空車の時は目的地まで乗せてくれる。擦れ違えば必ず「グッドモーニング」「グッドイブ

ニング」「グッドナイト」「こんにちは〜、お元気ですか〜」と気軽に挨拶をする。全

員だ。それはグリーンのユニフォームを着た植栽スタッフも同じで、全員が柔らかな笑顔を見

せて挨拶をしてくれる。今まで泊まったホテルでこれほどの優しい笑顔にあったことが無い。

礼儀正しく、かつフレンドリーな彼らの笑顔でこのホテルのレベルが維持されていると言って

も過言ではない。

  

レストランも充実

 ホテル以外で食事をしたのは2回だけ。結局ホテルにあるレストランを全部制覇してしまっ

た。いろんな種類のレストランがあり、飽きさせないとまではいかないが変化に富んでいるこ

とは確かだ。

パディ(バイキング):4回の朝食お世話になった。6時半〜10時半までが朝食、18時から23

時までの夕食はインドネシアンとなる。睡蓮の池に浮いたような作りで、朝でも8時から民俗

楽器の演奏もある。朝食バイキングは、ナシゴレン、ミーゴレンといったインドネシア料理、

お粥、スチームライス、味噌汁、漬物、日替わり料理の日本食、中華点心、洋食と種類が多い。

オムレツなどの卵料理と、ワッフル、パンケーキの2人の料理人がその場で客のオーダーで料

理を作る。南国らしくフルーツもふんだんだが、たいていのものは熟れる前で硬いか熟れてい

ても甘くない。バリに行ったらとにかく生水、フレッシュジュース、氷、生野菜、カットフル

ーツなどは決して食べないように、とバリ島のベテランから言い聞かされていたので、1日、2

日目は食べるものが限定されてつまらなかったが、どうやらホテルでは何を食べても飲んでも

大丈夫とわかってからは選択肢が増えた。ここでは全種類食べることが出来るが、ルームサー

ビスで朝食を頼むとアメリカンブレックファーストが19ドル、インドネシアン風が16ドル、

和定食は19ドルとなる。

  

サミサミ(地中海料理):プールとランギットシアターの間にある。海に近く開放的なレストラ

ン。濡れた水着のまま昼食を食べに行ったら、椅子にバスタオルを敷いてくれた。メニューは

パスタ料理やピッツァ、ステーキ、サンドイッチ、ハンバーガーなど。プールで出前を取ると

ここの料理が運ばれて来る。場所柄か、応対はかなりフレンドリー。味はフツーです。

  

本膳(日本食):スパ棟の手前にある。一番新しく出来たようだ。人懐こいバリのスタッフが男

女とも着物を着てサーヒスをする。天性の陽気さがここでは慎ましやかにといわれているのか、

皆行儀が良い。日本にも東南アジアの従業員の方がいる飲食店は多いから、枝豆や冷奴をつま

みながら冷酒などを飲んでいると、ここがバリ島のホテルの中であることを全く失念してしま

いそうだ。メニューは、つまみや鮨、天麩羅、刺身などの和食を食べさせる座敷とカウンター、

店を入ったところに鉄板コーナーがある。刺身盛り合わせは、鮭、蛸、鮪、烏賊などがあった

が、現地で捕れたものと輸入品が混じっていた。うどんはS子さんが頼んだものを1本だけ啜

っただけだが、手打ちでしこしことうまい。エビスビールや日本酒も数種類ある。

  

キシック(シーフード):バリ島の売りの1つが夕陽。ジンバラン湾に下りて夕陽を見ようと思

っていたのだが、面倒になってしまった。ホテルの中にも夕陽を見ながら食事の出来る場所が

あるに違いないと探したところが、このキシックだった。夕陽に間に合うよう余裕を持たせて

午後5時半に予約。プールからどんどんと石段を降りていくと、断崖絶壁の上に簡素なレスト

ランがあった。一番の客で未だ日没まではしばらくありそうな太陽はギラギラと痛いほど。早

速撮影を開始。100枚は撮っただろうか。大汗をかきながら2台のカメラで撮影をする私に、レ

ストランの愛想の良いお兄ちゃんが、「2人のところを撮影しましょうか?」とニコニコと笑い

ながら申し出る。こっちは撮影で必死なのにぃ。6時過ぎに無事日が沈むと、生の魚介類が並ぶ

ケースの前で、これとこれとそれ、と注文をする仕組み。奥の焼き台で見事に焼かれた料理が

しばらくしてから運ばれて来た。量が多すぎて残してしまった。ここで食べたソトアヤムとい

うスープとサラダバーがとても美味しかった。このレストランから左手に行ったところから、

長い長い桟橋があり、その突端にたった2人だけで貸し切るロマンティック・ディナーの席が

ある。席の手前にはやっぱり民俗音楽の楽団もいて、2人のための音楽が供される。キシックに

いる他の客達は、そのおこぼれの音楽を聞かせて頂くという恰好だ。私達は女2人だから、そ

の席は予約しなかった。カクテルの種類も多いが、夕陽が何よりのご馳走であった。

  

  

ダマールテラス(軽食と飲み物):スパで心地よい疲労を癒そうとインドネシアスタイルのアイ

スティを飲んだ。バリではお茶を頼むと、ナッツやポテトチップのようなスナック類が付いて

来る。昼間はティラウンジので、午後はアフタヌーンティもある。夜になるとバーの役割とな

り、午前1時までの営業。プールで頼む飲み物はここのもの。

  

ランギットシアター(ディナーショー):毎週土曜日の夜、ラーマヤナダンスのショーが行われ

る。食事は19時からでインドネシア料理のバイキング。料理のコーナーとデザートのコーナー

に分かれ、品数も豊富。但し、暗いテーブルで食べたので写真の上がりが悪いから割愛。

水のパラダイスはプール

 1日目は、ヴィラの専用庭でずっと過したのでプールには行かなかった。しかし、折角このホ

テルにいてプールを経験しないのもオカシイネ、という訳で2日目の午前中から体験的にプー

ルに出掛ける。なるべく涼しげなビーチチェアを2つ選ぶと、プールボーイ(おじさんもいる

が)がさっと走って来て、バスタオルをセットしてくれる。一度そのチェアに横たわると気持

ちの良いこと。庭より開放的だから風がひっきりなしに吹く。ギラギラした太陽からはチェア

の上の木の葉が守ってくれる。時折、木洩れ日がチラチラと眩しい位だ。プールの方からは楽

しそうな人々の声が聞こえる。一眠りした後は、泳ぐいや、歩くことにしよう。水はかなり冷

たい。幅は40メートル、奥行きは20メートル位だろうか。このプールの10メートル位下に

半円形の小さめのプールがあって2段構えの構造になっている。ホテルに集まっている人を一

堂に観察するには朝の食事場所「パディ」か、このプールがやりやすい。普段このホテルの日

本人客比率は45%ということだが、ゴールデンウィーク中とあって日本人はもっと多いよう

に見える。フロリダから息子夫婦と来た金持ちのおばあちゃん、金持ちの家庭で育った屈託の

無いインドの若者4人組、30代と若いがビジネスで成功したらしい、可愛らしい女の子の金髪

のアメリカ人パパ、やたらとおしゃべりなフランス人中年夫婦、プールの真中で小学校5年生

位の男の子にバタフライの練習を指導する3世代の5人連れ家族、日の当たるチェアで泥縄式

にバリ島のガイドブックに読み耽る日本人の若い女性、ビジネス書を読む日本人のお父さん、

ジョギングの分厚い本を読むアメリカ人のおじいさん、かなり恐そうなスジの日本人・・・・。

プールのラインに沿って何周も歩いていると、いろんな客の観察がじっくり出来て面白い。し

かし、このプールの最大の魅力は、下のプールに盛大に水が落ちる際で観る景色だ。多くの人

がこの際に来て嬉しそうに海を眺めている。あぁ、パラダイスだね。

  

  

プールボーイのサーヒスが素晴らしい。これだけ多くの客がいるにも関わらず、定期的に冷

たいタオルのサービス、灰皿の交換、濡れたタオルの交換、1日目は笹の葉に包んだマンゴアイ

スクリーム、2日目はスイカを配ってくれた。スイカを配ったお兄ちゃんにはびっくりさせられ

た。チェアにいる客全員にスイカを配り終わると、靴を脱いでそのままプールの中へ。泳いで

いる人には遠慮したが、水が落ちる際でぼんやりしている客にスイカを配り始めたのだ。この

好機を逃してはならじと近くまで行って撮影したが、配り終わった彼は何事も無かったような

表情でプールから上がって来て、ずぶ濡れの恰好で他の仕事を始めたのだ。何というサービス

精神! 飲み物も食事も頼めば持って来てくれる。支払いはサイン一つだ。今回2度しか行か

なかったが、1ヶ月滞在したら、25日は過したいプールである。

  

  マンゴアイスクリーム          プールボーイがプ-ルの中でスイカを配る

楽園の中の天国?スパ

 バリはエステ天国だと言う。オシャレにとんと関心の無い私はフェィシャルを2〜3度やった

ことはあるが、オイルマッサージも含めてエステの経験はゼロ。何だか気恥ずかしいし、やっ

た効果があるとも思えなくて。しかし天国に来ていてそれをしない手も無かろう。2000年に完

成したこのホテルのスパは他のホテルからもお客が来るほど充実していて人気があると言うで

はないか。しかもヴィラパッケージには、1回のマッサージがついているしな。午後3時に予約

をしてS子さんとコワゴワとスパに向かう。正面ロビーから客室棟を抜けた端にあるので、私

達のヴィラから歩くと相当の距離だ。もしかしてここまで歩くのが美容だということか。汗ぐ

っしょりになってチェックインすると、特典サービスは「バリニーズマッサージ」だと言う。

50分で料金を支払えば$42。鍵を渡されてロッカールームで着替えろと指示が出る。着てい

るものを全部脱いでロッカーに入っている黒の紙製のパンツをつけて客室と同じバリ式のロー

ブを纏う。この紙製のパンツのサイズは1つで、ゆるゆるのS子さんに比べ、私はやっとの思

いで履いた。パチンパチンの上に、汗をかいているからパンツが破れるのではないかと、恐る

恐る歩く。私達の係りの女性が呼びに来て部屋に通される。「2人一緒で」と注文したからベッ

ドが2つ並んでいる。並んでマッサージを受けるカップルもいるらしい。フン!高いベッドに

うつ伏せで寝ると枕の部分に顔を伏せることになる。その枕部分に丸く穴が開いていて、穴か

ら見る床には花が置いてある。素晴らしい演出だ。色鮮やかな花からは芳しい匂いもする。背

中や足の裏にオイルが塗られ、力強い手でマッサージ開始。日本では、ホテルに泊まればたい

がいはマッサージをお願いしているから慣れているのだが、手の平を立ててカラダの線に沿っ

てグイグイと押される。イタ気持ち良い〜!ツルツル、グリグリ、ツルツル、グイグイ。あぁ、

何と気持ち良いことかぁ。やがて快楽に目をつむったらいつの間にかうとうとしてしまったら

しく、起こされて仰向けになる。またオイルマッサージが繰り返される。時々「気持ち良いで

すか?」と質問されるのだが、答えるのも面倒だ。50分の快楽が終わると、洞窟のような天

井のあるジャグジープールのチェアでクールダウン。そこに温かいジンジャーティとバリのお

菓子が2種類運ばれて来る。ロッカールームに戻って、スチームバスやサウナ、シャワーを使

ってスパ終了。帰りには、翌日の「フェイシャルマッサージ」、翌々日の「ルルール」の予約を

してしまった。いわゆる「クセになる」というヤツだ。

 2日後の「ルルール」は豪華版で、前半短めのバリニーズマッサージ、ライスパウダーや各種

ハーブを混ぜ合わせたスクラブのボディパックをし、前と後ろが乾いたところで、部屋の外に

付いているシャワーで洗い流す。ただ洗うのではない。全身にヨーグルトをベチャベチャに塗

られて、それごと洗うのだ。ヨーグルトの冷たいこと! その後、赤いバラの花びらとハーブ

袋の入ったフラワーバスにご入浴。ジャグジーだ。20分もそこでボコボコやって、最後にラ

ベンダーローションを全身に塗って仕上げ。90分の贅沢だ。

  

  ミニパターゴルフ場にかかる橋を渡ると天国スパの入り口           ロッカールーム入り口

 このスパには、最終日ウブドから帰ってから、預けていたスーツケースを転がしてシャワー

を使わせて貰いに来た。シャワーを浴び、日本用の服装に着替えて、また汗だくで大きなスー

ツケースを押しながらスパのドアを出たところで呼び止められた。かなり遠いロビーまで自分

で運ぶつもりだったのだ。「お客さまは今夜のJAL720便でお帰りですか? 未だお時間があり

ますね。そのお荷物は今からロビーにお預けになるのでしょ? 大変でしょうから、係りのス

タッフに運ばせましょう。預かり証ですか? お客さまがいらっしゃる所にお届け致しますか

ら、お任せくださいませ」。この4日間、一生懸命覚えたのだろうが、どこか意味が通じない日

本語との会話だったのが、見事な日本語、見事なホテルスタッフとしてのプロのサービスに遭

遇して、私達2人は口をあんぐりと開けてしまった。ホテルの日本人スタッフの女性だった。

スパから大きな荷物を持って出て行く日本人女性を見ただけで、すべてを理解し、判断し、行

動する。これぞホテルパースンの鑑ではないか。しかも私達は数時間前にチェックアウトして

しまった客だ。いわばホテルのご好意でシャワーを使わせて貰ったに過ぎない。ホテル滞在最

後、この女性の応対によって、リッツカールトンバリの株はうなぎ登りの高得点を獲得したの

だった。

ウブドの街に遊びに行く

 JALの成田=デンパサール直行便は、7時間弱のフライトで、ジャカルタで乗り換えるよりず

っと楽だ。しかし行きの到着が午後10時20分、帰りが午後11時50分の出発と、どちらも深

夜の到着と出発が難である。ホテルのチェックアウトは正午。午後6時まで延長も可能だが、1

泊宿泊料の6割を支払わなくてはならない。最終日、お昼にチェックアウトしてから深夜まで

どう過すかを考えた。ウブドに行こう。問題は足だ。ホテルからタクシーに乗ればウブドには

行くことが出来るが、ウブドに空車のタクシーは殆どいないので帰って来るのが大変。そこで

タクシーのチャーターということになる。しかし2日前にクタの街に行くために乗ったタクシ

ーの運転手君は、「帰りも乗らないか? 夕日の名所のタナロット寺院に行かない? 明日はど

こに行くの? ジンバラン湾なら迎えに行くよ。明後日はウブド? ウブド出身なんだ。観光

客が行かない隠れスポットに連れて行くよ? どう? どうなの?」とシツコイったら無い。そ

れだけ売り込んで料金がたったの2万2500ルピア。400円位だ。すべての誘いにNOと言ったの

3万ルビア払ったが。運良く人柄の良い運転手さんに当たる可能性も無いではないが、高く

ついてもホテルの車で行こう。1時間$15である。デワさんという寡黙な運転手さんだった。

車は北に向かって走る。ジンバラン村、空港の横、クタ、デンパサールを過ぎると農村ののん

びりした風景に変わる。ライステラス(水田)も見えるが、刈り取った後の田もあれば、重く

頭を垂れた稲穂の田もある。2期作か3期作か。デワさんがポツリと「バティック」と言って建

物に指を差す。このあたりはバリ独特の柄を染めた生地バティックの工場兼店舗がたくさんあ

る。ペイントという看板も見えて、絵画を売っている店も目立ち始めた。道を歩く人々も芸術

家風のヨーロッパ人が目を引く。1920年〜30年頃、このウブドにヨーロッパから来た芸術家達

が住み着くようになってから芸術、芸能の街になったという。ケチャやレゴン・ダンス、ラー

マヤナ・ダンス、バロン・ダンスなどのバリ伝統芸能の公演も盛んで、他の地域から毎日夜に

なると公演鑑賞目的の客がたくさんウブドに押しかけるらしい。そして寺院も多い。モンキー

フォレストからウブド王宮を結ぶジャラン・モンキーフォレストとT字型になるジャラン・ラ

ヤ・ウブドが賑やかな通り。そんなウブドだから美術館やギャラリーが実に多い。アルマ、プ

リ・ルキサン美術館、アントニオ・ブランコ邸、ルダナ美術館、ネカ美術館、プラノト・アー

ト・ギャラリー、ニョマン・メジャ・ギャラリー・・・・。私達はネカ美術館に行くことにし

た。絵画の収集家テジャ・ネカ氏所蔵の美術品を6棟の展示室に年代別に展示している。第2

棟にはオランダ人画家アーリー・スミットの作品、第6棟には外国人画家の作品があり、他の

棟には若手画家の育成に熱心なネカ氏らしく現代の作家の展示もあった。全作品を通じて印象

に強く残った作品はABDIL AZIZ(1928〜)の「惹かれあう心」。もともと2つの作品だったが、

隣に並べてみると思春期前の男の子と女の子の「惹かれあう心」のように見えたということか

ら並べる展示になったらしい。バリの宗教的な神話を描いた絵画、民話を主題にした絵画、バ

リに魅せられた外国人達の絵画・・・。2時間近くネカ美術館を楽しんだ。

  

                ウブドの中心にあるウブド王宮

           

      ARIE SMIT ABDIL   AZIZの「惹かれあう心」 ANTON KUSTIA WIDJAJA

 車は再び南を目指して走っている。犬がいる。またいる。よく見ているとバリ島は犬だらけ

だ。猫は1匹も見かけなかった。モロッコは猫天国、犬受難の国だったが、ここは反対なのだ

ろうか。しかしウブドで最後に立ち寄った「茶茶」という店は猫の人形で溢れていた。1日の仕

事を終えた人々がバイクに乗って帰宅を急いでいる。2人乗りが多い。台湾で、タイで、中国で

見かける風景だ。イタリアもそうだった。農家では田んぼ仕事から帰った女性達が家の前での

んびりとおしゃべりをしている。畑のあちこちで刈った草を燃やす煙が立ち昇る。1万3000も

島があるインドネシアは、イスラムが主流だが、このバリでは圧倒的にバリ・ヒンドゥー教の

信者だ。家々、街のどこでも人々は朝夕のお供えを欠かさない。どこにも神と霊がいるのだ。

長く政治不安が続くインドネシアにあって、この島は奇跡的とも言える平和を維持している。

外貨獲得上この島の平和は国の重要施策なのだろうか。

今は乾季だから、これでも涼しいらしい。11月から3月まで続く雨季には、気温がもっと上

がり、毎日のように激しいスコールが降るのだと言う。右手に夕陽の強い日差しがチラチラと

見える。昨日見た夕陽は実に美しかった。ジンバランの丘の上は空気が澄んでいる。空は突き

抜けるように青い。インド洋の海も真っ青だ。南国独特の花々が咲き乱れている。鳥が鳴く。

太陽に照り返す原色の昼間だ。一方、夜空は黒いベルベットのようだった。そこに満月が上が

った。星も宝石のように輝いていた。南半球だからと南十字星を探したが、どの星も大きくキ

ラキラと光っていて、どれがそれかは特定出来なかった。星の名前なぞわからなくても良い。

美しい夜空で良い。バリ島は滞在した時間分の楽園を味わえる。

            

                                    おしまい

データ:「ザ リッツカールトン バリ ホテル&リゾート」

   住所:JALAN KALANG MAS SEJAHTERA.JIMBARAN.BALI 80364 INDONESIA

   電話:(62)(361)702 222

   FAX:(62)(361)701 555

   E-mail:ritzbc@indosat.net.id    http://www.ritzcarlton,com

滞在した日:2002年4月   書いた日:2002年5月

滞在中の食事内容は、「パクパク日記」2年5月1週をご覧ください。

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