パクパク日記3年9月1週

            夏休みが終った途端、夏が帰って来た。ちょっと遅くない?

          六本木ヒルズ

9月 1日(月) 曇り 涼しいねぇ

昼 六本木「支那そば 勝丸」 塩ワンタン麺 850

80年前の今日、正午前に関東大震災は起こった。防災の日として、朝からあちこちで防災の訓練が行

われていた。そして去年の今日、八尾の「おわら風の盆」に行った。あの日日本で1番暑かったのは富

山県で34度だった。世には、ラーメン博士とかラーメンチャンピオンなどを教祖と崇めながらラーメン道の

修行に励んでおられる方々が多々おられるようだが、私なぞたまに食べるきりだ。「勝丸」は、横浜の

ラー博にも出店している(いた?)と聞くが、ラー博自体も行ったことがない。六本木に店が出来たとい

うので行ってみた。店の実力を知るには塩が良かろう。ワンタンも入れよう。スープは魚の匂いがして、

かなり塩からい。もっと薄くても良いのに。麺は旨い。いまどき「支那そば」なんて言って良いのかなぁ。

午後のおやつ 六本木ヒルズ・グランドハイアット東京「フロレンティーナ」 無花果のタルト 600円、

   カプチィーノ 800

今日から六本木ヒルズにあるグランドハイアット東京に宿泊。夕食の店を選びがてら、1階にあるイタリ

アン・カフェの「フロレンティーナ」に行ってみる。カジュアルな雰囲気だ。アフタヌーンティが1700円とい

うので、安さに惹かれるが、やめておこう。夕飯が大事。カプティーノのカップがデカイ。タルトは普通。

夜 六本木ヒルズ・グランドハイアット東京「ザ・フレンチ・キッチン」 鴨のフォアグラソテー カシス

     風味 のルバーブ添え 2300円、ロブスターのビスク 1300円、ブルターニュ産オマール海老のグラ

    タ ン シャンパンとトリフの香り 3600円、メロンのシャーベット 1000円、ティオペペ、白ワイン(シャ

     ブリ) 2100円、赤ワイン

  

    ブース席にはテーブルクロスを敷かない      トロリと旨いフォアグラ        パンの尖ったところがカリカリ

  

   たっぷりのビスク あぁ、旨い!      オマール海老のグラタン 食べきれない   スプーン型のチュールがお洒落

さんざん迷って、2階の「ザ・フレンチ・キッチン」に行くことにした。プールでかなり運動してカロリー的に

も万全の体制を整えた。有名なオープンキッチンの前のキャットストリートが見える席に座りたかったが

「喫煙席」と言ったばっかりに、周りがほとんど見えないブース席に案内された。メニューを見ると、品数

は余り多くない。屋外席を入れると230席あると言うから、メニューを絞っているのだろうか。でも、私の

好物があるからいいや。鴨のフォアグラはボリュームたっぷり。ロブスターのビスクは大好物だが、海

老味噌の旨味が十分に出たアメリケーヌソースが唸らせる。お替りしたい!メインに選んだオマール海

老のグラタンの皿が余りに大きくタジログ。グリーンアスパラとホワイトアスパラ、オマール海老がソー

スの下にたっぷり隠れていて、満腹。この店ハコストパーフォーマンスが極めてよい。また来ようっと。

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9月 2日(火) 晴れ 思い出したような猛烈な残暑

朝 六本木ヒルズ・グランドハイアット東京「ザ・フレンチ・キッチン」  和朝食(グレープフルーツ

     ジュー ス、塩鮭、厚焼卵、きゃら蕗、焼き海苔、万願寺唐辛子、飛竜頭炊き、胡麻和え、湯葉、焼き

     帆立 と山芋のサラダ、赤だし、ご飯、西瓜) 3000円+サービス料+税

 

和朝食派の私は悩んでいた。和食レストランの朝営業は無いし、それを食べるにはルームサービスし

かないのか。ウンニャ。昨夜夕食の終わりに聞いてみると、何とフレンチ・キッチンで和朝食を出してい

るというではないか。それなら、どこかに書いておいてくださいよ。ほとんどの客がオープンキッチンの

前に並べられたビュッフェ料理を食べる中で、私はこうして和定食にありついたのである。でも高いね。

昼 六本木ヒルズ・けやき坂通り「六本木 竹やぶ」 天麩羅せいろ+お替り蕎麦 2500円+?

  

  

柏にある「竹やぶ」は、蕎麦好きなら誰でも知っている有名店だ。阿部さんというカリスマ的なご主人を

世間は「翁」の高橋さんのライバルと見ている。今年3月恵比寿店を閉め、4月から六本木店が誕生。

店に入って、え?と思うのは椅子だ。イタリアのアンティーク家具らしいのだが、何だかマリー・アントワ

ンネットという風情で「エー?ナニィ??」。食後、伺ってみたら「主人は、そのアンマッチが気に入って

いるそうです」とのことだった。せいろの量は極めて少ない。11200円。せっかく来て、それじゃあ寂

しいと天麩羅せいろにお替りも注文。天麩羅はサイマキ海老のかき揚げで、熱々のそれに温かい天ツ

ユをかけるとジュッと音が出る。天ツユと蕎麦ツユは一緒。かき揚げを崩しながら、蕎麦も頂くが、かき

揚げがどんどんツユを吸ってしまうので、蕎麦用としては足りない。太めの麺で蕎麦の香りが強い。2

枚でも量が少ないので、アッという間に終った。おしゃべりしながら払ったので、総額がいくらだったか

憶えていない。確か3500円前後払ったような気も・・・・。なので、お替りせいろの値段がわからない。

夜―1 早稲田・リーガロイヤルホテル東京「なにわ」 鉄板焼梢コース(穴子と長芋のとんぶり和え、

        ォアグラのゼリー寄せ、鯛の紅花風味、岩手産黒毛和牛フィレ(150グラム)、旬の野菜(茄子、ア

        ンデス芋、牛蒡、蓮根)、モヤシ(これはサービスです)、ガーリックライス、漬物、赤だし、(デザート

        とコーヒーはパスした) 1万円、生ビール2杯、冷酒(田酒)4合瓶 4800

  

  

  

A先生のお出まし。食事のご希望を伺ったところ「魚より肉」ということで鉄板焼に行く。以前気に入って

いた椿コースが無くなったので、最近はもっぱら梢コース。ニンニクチップはいつものごとく「山のよう

に」と注文。肉を焼くにしても、ふっくらと仕上げるには大変な技術が必要だそう。そう聞いて凝視してみ

ると切り分けられた肉の1片ずつがぷっくり丸みを帯びている。なるほどなぁ。ガーリックライスには、特

製のおこげを載せて貰う。カリカリと旨い。コースにはデザートとお茶が付くがバーに行くためパスした。

夜―2 早稲田・リーガロイヤルホテル東京「セラーバー」  ジントニック 4

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9月 3日(木) 晴れ 34度! 夕方もの凄い雷雨

昼 白山「ティールーム レザン」 カレースパwithミニバーグ、水出しダッチ式コーヒー セット890

   

1回の通院。先月、摩訶不思議な「オムグラ」(ドリアの上にカレーをかけてオーブンで焼いた料理)

を食べた「レザン」に行ってみる。メニューをシゲシゲとながめ、スパゲッティにカレーソースと小さなハ

ンバーグを載せたカレースパwithミニバーグにした。福神漬けまでついて来る。これ結構イケルねぇ。

午後のお茶 神保町「さぼうる」 アイスココア 580

地下鉄神保町の駅近くに、世界遺産とは言わないが、神保町遺産に指定したいような古色蒼然とした

喫茶店が2軒並んでいる。「さぼうる」と「さぼうる2」。地下の席に案内されると、空間を囲む一面のレン

ガには落書きが一杯。落書きがインテリアにもなっている。奈落の底に座っているような楽しい錯覚。

夜 西新橋 「藤吉楼」 お任せコース(玉子豆腐、もずく酢、生湯葉、フォアグラの茶わん蒸し、毛蟹、

       ハモと蕪煮、鴨の手羽先の甘煮、焼き茄子、ポテトサラダ、自然薯マグロかけご飯、ちりめん山

      椒、漬物、白玉ぜんざい、生ビール、冷酒(一ノ蔵 無鑑査3本)

  

  生湯葉(写真手前)の出汁が良い味       これが名物フォアグラ入り茶わん蒸しダス。とろとろ・・・・あぁウマ

  

  

  

シンドイNPOの理事会を3時間で終え、新橋に向かう。空が真っ暗になり、今にも雷雨が降って来そ

う。走って近くのコンビニに飛び込んで傘を買った。買った途端、猛烈な勢いで雨が降り始め、同時に

激しい雷鳴。こんな時は外に出ずにコンビニで雨宿りだ。25分間で、コンビニ取り扱いアイテムをほと

んど観察し終えた。面白かった。SMに誘われて「藤吉楼」に行く。ここのご主人は、以前銀座の数奇屋

通りで同じ店を開いていたのだが、いろいろ事情があって、新橋に店を出し直した。SMから「ご主人の

オリジナル料理のフォアグラの茶わん蒸しは絶品」と聞いて楽しみにしていたら、早くも4品目に出た。

罰当たりなことにフォアグラは3晩続きだが、トロリとしたフォアグラと卵を一緒に食べる幸せをシミジミ

味わう。一見アンマッチに見えるが、相性はバッチリ。次はドカンと毛蟹だ。女2人で食べるには多過ぎ

る。どの料理にも愛情がこもっていて嬉しい店だ。これだけ飲み喰いして、@1万円だからまた嬉しい。

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9月 4日(木) 晴れ 今日はちと涼しい

昼 早稲田 「とうがらし」 石焼ビビンバ定食 780

  

近所の焼肉屋の店名が変わった。変わったのは店名だけなのか、経営者もなのか、料理もなのかは、

入ったことが無いのでわからない。石焼ビビンバは、とにかくかき回す。ぐちゃぐちゃにかき回すのが旨

く食べる秘訣だったよな。汗が出て来た。石鍋の底のご飯は完全なおこげだ。食べているうちに大汗。

夜―1 四ツ谷3丁目・杉大門通り「おちあい」  お任せコース(醤油豆、ササミの梅だれがけ、刺身盛

          り合わせ:アワビ、中トロ、ヒラメ、スズキ、蛸、イカ、ハマチなど)、トロロ芋、蟹シュウマイ、揚げ銀

          杏、銀鱈の粕漬け焼、丸干しとタタミ鰯、もずく酢、芋鍋、雑炊、ビール、冷酒

  

  

午後から出社した。ミーティング3件。オフィスは禁煙だから、喫煙できる会議室にこもりっきりである。

女性4人の宴会。4人でも小上がりを貸して貰った。そろそろ山形県や宮城県の芋鍋の季節が来る。山

形型は牛肉+醤油味、宮城型は豚肉+味噌味。山形県出身のご主人だが、どちらの型でもない「おち

あい型」の芋鍋がコースのメインだ。出汁が効いてとっても旨い。4人は数年間同じ職場にいた。2人は

週に1、2度の出社だったが。彼女達2人で、オリンピックと世界陸上の金、銀、胴メダルを持っている

のだから、スゴイ。あの頃の話、現在の話、将来の話。話なら時を自在に駈け巡ることが出来るよね。

今日はご馳走になってしまったが「おちあい」のコースを食べて飲んでも@6千円前後だから有り難い。

夜―2 四谷三丁目のカラオケ店  ジントニック

Sブーは音大の声楽科、私は合唱部出身だが、陸上出身の2人がカラオケ屋でハバを利かせていた。

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9月 5日(土) 晴れ 暑いが湿度が低く気持ちが良い

昼 赤坂 「やげんぼり」 嵯峨野膳(湯豆腐、京漬物鉢、小松菜と油揚げの煮浸し、ちりめん山椒、赤

     だし、お櫃のご飯) 1000円+税

京都・祇園に本店を持つ「やげんぼり」のランチ。千円のコースは2つあり、湯豆腐を選ぶか出汁巻卵

焼きを選ぶかの差だ。湯豆腐の嵯峨野にした。京都のお漬物がたっぷり。これでご飯2杯はいける。繊

細なちりめん山椒で1杯、湯豆腐と小鉢でもう1杯。ウームご飯が進みそうだなぁ、と思ったら、お櫃ごと

出て来たではないか。しかし私は小食なので2杯だけ。漬物は薄味で旨い。茶漬けにするのを忘れた。

午後のお茶 赤坂 「アンナミラーズ」 アップルパイ 580円、コーヒー 450

    

午後1時50分から4時40分まで「アンナミラーズ」。途中話す相手は交替したが。未だ1円も売上げの

ない自分の会社の仕事になりそうだったのに、コーヒー1杯で誤魔化されちゃった。商売っけないねぇ。

夜 新宿・ルミネ1 「ヴェトナム・アリス」 ホーチミンコース:グレープフルーツサラダ、魚介と野菜いっ

        ぱいヴェトナム風スープ、ブン・ボー・フエ(牛肉入り辛口のビーフ麺、ミニデザート(ラープーチン) 

        3500円+税

  

  

アルカルトに加えて3つのコースがある。1500円のハノイコース、2500円のニャチャイコース、そして

3500円のホーチミンコース。どれもヴェトナムの都市名だが、北から南下するに従って値段が高くなっ

ている。ブン・ボー・フエを食べたかったのでホーチミンコース。グレープフルーツサラダは、1個くり抜

いて、大根、ニンジン、海老とグレープフルーツをドレッシングで和えてある。海老せんべいに乗せて食

べる。おせち料理の紅白ナマスに海老とグレープフルーツが入っているような味だ。スープは白身魚、

海老の魚介類に加え、オクラ、セロリ、トマト、パイナップルなど野菜がたっぷりでヘルシー。期待したブ

ン・ボー・フエだったが、麺が透き通ったフォーかと思いきや、茹で過ぎの素麺のようでがっかり。スープ

の辛さはたいしたことはない。でもヴェトナム料理は、全体に優しい味でバランスが良いね。 無酒日

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9月 6日(土) 晴れ 今日も暑いぞ

昼 小金井市前原町 「プーさん」  野菜チキンカレー アイスクリーム付き 1500

  

武蔵小金井駅南口から歩いて5分。「プーさん」の野菜チキンカレーを1、2口食べただけで感動!もう

旨いの何のって。「夢子のカレーベスト3」にいきなりランクイン。チキンはとろとろに溶けてしまってトロ

ミ隊の一員となっている。野菜は確認できただけでも、グリーンアスパラ、ブロッコリー、カリフラワー、

キャベツ、トマト、スナップエンドウ、茄子、シメジ、エノキ茸、ピーマン、赤と黄のパプリカ、ゴーヤ、茗

荷、そしてなぜかこんにゃく。甘口、辛口があり、それぞれに5段階。たくさんのスパイスが入っている

らしく、奥深いコクを感じる。それほど辛くはないのだが、食べるうちに汗がだらだら。ちょっと遠いけど、

これからも贔屓にしたい。月・木休み、火・金は昼営業なし、という変則営業なので憶えられるかなぁ。

店の入り口にコミック本の本棚があるせいか、1人客はほぼ全員コミックを読みながらカレーを食べて

いる。こんな魂のこもった旨いカレーをマンガ読みながら食べるって失礼っしょ。夢子オバサン怒るよ。

夜 小金井「幸寿司」 刺身(子持ち昆布、とり貝)、握り(大トロ、鰯、ネギトロ、穴子)、蟹の味噌汁、生

    ビール、冷酒(男山)

  

  

昼過ぎから小平の家へ。今日は2人の兄と兄嫁も揃って残すものの選定と箱詰めをする日である。長

い間空家状態だったから、埃の汚れがヒドイ。大汗だらだら、手は真っ黒。桐の箪笥の引き出しから、

母がキチンと保管していた兄妹の通知表が出て来た。暫し自分の通知表に見入る。昼から始めて、何

とかカタチにしたのは午後7時だった。あぁ、腰が痛いぞ。小金井のお寿司屋さんに次兄の娘達やその

ご主人も加わって全員で食事。ここは昔甥がバイトでお世話になった店でもある。家に感謝する会だ。

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9月 7日(日) 曇り 涼しい

昼 早稲田「モスバーガー」 ジャンバラヤチキンとサラダセット(ジャンバラヤチキンバーガー、ミニサラ

     ダ、コーンスープ) 620円、オニオンリング 200円 +税

チキンをオレンジに漬けて下処理をし、レタスとグリーンアスパラを挟んでオランデーズソースをかけた

のが、今モスで売り出しに力を入れているジャンバラヤチキンだよ。オニオンリングはやっぱり旨いね。

午後のおやつ 早稲田「モスバーガー」 杏仁果実 300円、コーヒー 150円 +税

え?今日2度目のモスですか?いいえ、そのまま居座っておるんですの。こうした追加注文の場合、

私という客が先ほどから店にいるのを知っているのに「いらっしゃいませ。店内でお召し上がりです

か?」と聞く。マニュアル通りって、やっぱりヘンだ。1人でハンバーガー100個買ってもそう言うのか。

夜 早稲田 「オールドバサール」 ディナーAセット:キーマ卵カレー(激辛)、タンドリーチキン、ミニサ

     ラダ、バーバル(インド揚げチップ)、ガーリックナン、半ライス、ラッシー) 1580円+100円+税

  

夕方からヘルスクラブへ。プールでみっちり1050メートル運動。今晩もカレーだな。「オールドバサー

ル」に行くと、日曜日の夜というのに混んでいた。「この前ホームページ見ましたよ。あれを見てお客さ

んが結構来てくれる。ありがとう」と言われた。夜のコースは、ボリュームがある。ナンをガーリックナン

に変更したが、半ライスも付くし、大きなタンドリーチキンもドカンと登場。最後は苦しくなった。無酒日

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【今週の振り返り】

マイホームを買う場合、今は住宅ローンというものがあるから、比較的若い時代から購入できる。ある

程度の自己資金と年収があれば、だが。その昔サラリーマンなら、数十年働いて来て最後に貰う退職

金で家を建てることが多かった。55歳になった父(当時は定年が55歳だった)は、小平に土地を購入

し、自分で設計した2階建ての木造住宅を建てた。家族の誰にも相談せずに毎晩ぶつぶつ言いながら

設計図に向かっていた父を思い出す。階段下を2つの部屋の箪笥置き場にすることを思い付いたこと

だけで満足してしまったらしい家が出来た時、家族は不満たらたらであった。母は理想の台所にしたい

と、ステンレスの調理台やシンクを思い描いていた。ところが、工事の途中で来てみると、既にタイルの

流しが据え付けられていて、激怒した。いや怒るというより、深く嘆いていた。子供は3人いるのに、2

階に2部屋しかないため、1人は自分の部屋を持てないことになった。長兄は1室を確保すると宣言し

て譲歩する気はないらしい。仕方なく次兄と私がそれぞれの受験年だけ個室を使う交替制とすることで

手を打った。小平の前は世田谷区の砧町に住んでいたから、小平は余りにも遠い。中央線の武蔵小金

井か国分寺からバスに乗り、停留所からも10分は歩く。その頃小平は市ではなく町だった。回田新田

字○○という新住所を世田谷の友人達に知らせるのが、どうにも恰好が悪かった。父とすれば、長年

働いてやっと手にしたマイホームなのに、家族が文句ばかり言うので毎晩酒を飲んで荒れていた。そ

れでも、武蔵野の面影を強く残したままの自然は美しかった。春先に雑木林を歩いていると木洩れ日

の中に木瓜の花が咲いていた。夏は灯りを消して窓を開け放しておくと、蛍が家に飛んで来た。

やがて、長兄、次兄が同じ年に結婚して相次いで出て行き、3人暮らしとなった。母が死に、5年後に父

が亡くなった。1人になった私も暫くは住んでいたが、戸建ての1人暮らしは心細く、都内に引っ越すこ

とにした。誰も住まなくなってから18年も経った家は、ボロ家になったが、それでも雨漏りもせずにガン

バッテ建っていた。新築した時植えた庭の梅は、老木の貫禄さえ付けて来たが、毎年たくさんの実をつ

ける。玄関脇の金木犀は秋に良い香りを放つ。我が家が賑やかだった頃の家財、食器、荷物がそっく

り残っている家の整理していると、万感の思いが交差する。母が丁寧に取っておいた着物の端布や、

父が受け取った古びた辞令に汗がポタポタ落ちる。汗は涙の代わりだ。

           ボクはねぇ、一度も家を持ったことはニャーのだよ

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