歌仙「大川に」の巻

       大川に二月のくらげ漂へり    友游

        見送る船の水尾のまにまに   雅房

       初親を祝ふ大凧風抱きて     夢子

        四方にはなてる揚雲雀かな   酔猿

       同窓の宴の後の春の月      森林

        グラスもつ袖焦点になる    双葉

       色街を抜けて新宿東口      雅房

        石蕗みるごとに往にし日おもふ 友游

       不知火や枕に伝う涛の音     酔猿

        スポーツジムに芋煮の掲示   夢子

       本買へば表紙が匂ふ夜長かな   双葉

        酒鬼薔薇てふ少年の秋     森林

       塩の道たどりゆくバス月明かり  友游

        この峡に住むこころ定めて   雅房

       静けさに一曲献じソナタ弾く   夢子

        向日葵の眼に見つめられをり  酔猿

       幹をゆくいのちさやかに花満つる 森林

        雛彩彩や三寒四温       双葉

       をみなごに春の愁ひを言問はむ  雅房

        股ぐらに乗る琵琶の小ささ   友游

       色鯉や現われ出でてふと消ゆる  夢子

        貴船の宿の川床料理かな    酔猿

       ネオン坂スーツの肩にLet it be  双葉

        雪舟の空霜の声澄む      森林

       夕陽追ふて神集ふ湖へ来たりけり 友游

        幾たびこへし関もまぼろし   雅房

       捨て猫や色なき風を引き連れて  酔猿

        願い叶ひし夜鳥渡る      夢子

       あなたなる雨月の葛のあなたかな 双葉

        喫わないでねと逝きしいもうと 森林

       眉墨のごとうすうすと朝の雨   雅房

        人には告げず鳴門渦潮     酔猿

       家移りの疲れも春の空にとけ   森林

        会釈のどけき隣窓かな     双葉

       薄紅の敷物となり花の下     夢子

        若布ひろひしなぎさなつかし  友游

       歌仙「大川に」の巻    

         起首:平成9年2月5日 

         満尾:平成11年10月25日

         捌き:友游 

         連衆:夢子、森林、雅房、双葉、酔猿

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